SPEAK/24

clap res words book
2022/6/26 10:41 +Sun+
暗幕のゲルニカ/原田マハ

原田マハさんの美術ミステリを読むのは確か2冊目なのだけど、前に読んだ「楽園のカンヴァス」と同じく、ピカソの絵画が主軸にある物語。
現代と過去の章が行き来して、最終的に繋がっていく気持ちよさがある。
ピカソが「ゲルニカ」を制作した当時の情勢、恋人であるドラ・マールとの生活、そして現代では幼い頃見た「ゲルニカ」に魅了されてキュレーターとなり、とある悲しい出来事からニューヨークでのピカソ展に「ゲルニカ」を飾るため奔走する日本人の瑶子が主人公となる。

「ゲルニカ」はピカソが当時の戦争に対して思いをぶつけた、いわゆる反戦の絵画だそう。私は美術にはまったく明るくないので、この絵を見てもおそらくそうだとは思わなかったと思う。とても大きな絵画だそうなので、その迫力には圧倒されつつも、そこまでの想像力は働かなかったように思う。
なのでこの小説を読んで絵に対する思いを知り、世界(とくにヨーロッパ)におけるこの絵の意味や立ち位置を知り、それが9.11の直後にニューヨークに飾られることに対する瑶子の熱い思いを知った。
話中にも何度も出てくるが、国連本部にこの絵のタペストリーが飾られている。時を超えて意味を為す絵画の凄みをそこに知る。

「楽園のカンヴァス」と共通の同時人物もいて、そういうのも読み物として楽しかった。
原田マハさん自身がキュレーターの資格を持ち実際お仕事もされているそうなので、そういう博識な方だからこそ知っている史実が盛り込まれていて、勉強にもなるし読んでいて面白い。
長い年月を超えた「ゲルニカ」に対する人々の思いに胸が熱くなる物語。喪失感から立ち上がり闘っていく瑶子という女性がすばらしく格好いい。



0
* ← top → #

 monthly


-エムブロ-