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無い物ねだりの痛み
2012.8.3.Fri 03:38
[群青い]
君は不意に声を上げて笑って、
あの殆ど忘れてしまった声で
言葉を紡いでいった。
なんだかその一瞬一瞬が現実なのかも
分からずに、ただ話を聞いて話しての繰り返しで、なんだか自分だけが違う世界にいるような気がして少し不安にもなる
あの時肩に触れた指先が、今は
掌に分からないくらいそっと触れる。
それはなんだかくすぐったくて。
ただ無言で振ったあの手は力無かったけれど、脳裏に焼き付いてしまって
離れそうにないんだ
あの、ただ純粋に笑ってくれた時の
笑い声は無駄ではないけれど、無駄なくらい、頭の中で反芻して、
最初はふっと笑ってしまったけれど
いつ来るか分からない別れを想像したら
なんだか後から来る痛みを
態々今増幅させてしまっていると気付いた。
未来なんてものがないから
楽しかったとか良かったとか。
そういう感情を感じ取る間もなく
いつも儚いものを見る目で見ないと
いけないのが悔しいけれど、
でもそれすら当たり前になってしまうのは悲しくて
無い物ねだりなんていうのは
したくないけれど、する以外道が無いし、それしか無いのはそれでも望んでいるからで。
この一刹那すらも抱き締めて
いつか腕からすり抜けていくのを
追い掛けることもできずただ横目で見て
さよならをするくらいなら
出会わなければよかった、と考えたこともあったけれど
ただ抱き締めさせてほしいと思っている今、出会っていなければ出来なかったんだと思うと君がもっと愛おしくなって
切なくなったよ
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果汁3%微炭酸飲料
2012.7.31.Tue 04:43
[群青い]
届かない、届かないんだ
いくら走っても君はどんどん遠ざかっていって、君に届かないんだ
がむしゃらに走って、届きそうで届かない、そんな毎日
爽やかに吹き抜ける甘みのようなものは
あたしの身体中を巡って行く。
たまに立ち止まると、君も立ち止まってくれるから。
走り出せばまた君も走り出してしまうけれど、きっとその内追い付けるんじゃないかって。
君の気がその内変わる事を今日も祈って、ぎゅっと目を瞑りながら全力疾走をする。
手を伸ばしながら、前も見えないくらいに、走るんだ。
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パステルカラー
2012.7.30.Mon 02:30
[群青い]
祈っていた。
愛する人が僕であることを。
所詮淡い期待で叶う筈もない
ただ、捨てきれなかっただけで。
ただ、好きだと告げたかっただけで。
ただ、壊れるのが怖くて。
でもよくよく考えると壊れるほどの
関係でもなかったんだ。
相手が自分を好きとか嫌いとかどうでもよかった。
ぎゅっと抱き締めたかった。
彼なら受け入れてくれる、そんな気がした。
まるで、淡い色をした林檎のような、
熟してはいないけれど食べ頃のような、
そんな果実。
君にどれくらい届かないのか、
その林檎が物語っているような気がした
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華奢な指
2012.7.29.Sun 03:38
[群青い]
黙って突っ立っている僕の隣、
机の上の物を見つめる君が座っている。
ごちゃごちゃとした机には袋に入れっぱなしで水蒸気がたっぷりついたペットボトルや、訳のわからない書類、弁当などが所狭しと大雑把に積まれている。
君は一言も発することなく、
斜め45度の辺り、何処でもない所を見つめて、黙って煙草の箱に手を伸ばす。
その指をじっくりと見つめると、
細く骨張っていて、それなのに丈夫そうで、どこか不思議だった。
ライターで火を点けると先は一瞬赤くなり、白い煙が頼り無さげに縦横無尽に
ゆらゆらと揺れる。
思わず手を取ると何故か真ん中の指三本だけを握り締める。
すると君は掌全体で握り返して
自分の頬に当てた。
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