「こみべや。」、kmさまへの相互記念捧げ物。
学パロフレにょユリ、先輩フレンと後輩ユーリ。
ほんの何ヶ月かの違いで、あいつと一緒にいられないなんて。
もう何度も何度も、何度思ったかわからない。
どうしようもないってわかってる。
でも一緒にいたい。
…そう思ってるの、オレだけ?
なあ、フレン
オレとフレンは幼馴染みで、子供の頃はとにかく何をするにも一緒だった。
幼稚園の頃の話だ。
遊ぶのも一緒、イタズラするのも一緒(あいつは止める側だったけど)、食事するのもだいたい一緒。
オレ達は親が共働きだったから、どっちかの家で食べる事がほとんどだった。
食事をしたらフレンが片付けて、その間にオレが風呂掃除して、それで一緒に風呂に入ってた。
だってオレ、自分のこと、男だと思ってたから。
風呂から出て着替えたらテレビ見たりゲームしたりして遊んで、疲れたら一緒に寝る。フレンは体温が高くて暖かいから、冬なんか恰好の湯たんぽ代わりだったな。
ギュッと抱き締めたらフレンも抱き返してきて、あったかいね、ってにこにこしてるフレンを見てるだけで幸せで、いつの間にか眠っていた。
朝は泊まった先の親に起こされて、朝メシ食ったら一旦自分の家に帰って着替えて、すぐまた一緒に幼稚園に行って、帰ってからはさっきの話のリピートだ。
フレンと一緒に男に混じって遊んでたからかな、すっかり男言葉が染み付いて、今さら直すことなんて出来そうにない。
子供が少なくて、みんな一緒だった。それが当たり前で、普通だった。
あの春の日、オレとフレンは別々の場所にいた。オレを置いてフレンは幼稚園からいなくなるんだって知って、そんなのイヤだって駄々を捏ねまくったけど、どうしようもなかった。
早生まれとか言われても、当時のオレには理解できなかったんだ。それはフレンもそうだったみたいだけど、泣きながらオレの手を握ると涙でぐしゃぐしゃの顔で無理矢理笑って、こう言ったんだ。
『ちょっと離れちゃうけど、でもずっといっしょだよ』
…って。
フレンが嘘をついたことなんてなかった。実際家は隣同士のままなんだし、フレンは学校が終わったらすぐ帰って来て、今まで通り一緒に過ごしてた。
でもさ、オレは女だから。
意味、わかるだろ?
一緒に風呂に入ったり寝たりするのを咎められるようになった。
オレもフレンもあまり互いの家に行かなくなった。
毎日一緒に登校してたのに、あいつが勝手に部活に入ったせいでそれもなくなった。
学年がひとつ違うだけで、毎日会ってるのにこんなに遠いなんて。あいつの教室に行っても、あいつの周りにはいつも他の誰かがいた。
オレが中学に上がった時から、フレンの態度が確実に変わった。
やっぱり部活のせいで、登下校を一緒にする事もない。
教室に会いに行くと嫌な顔をする。
一緒に弁当食おーぜ、って誘っても断られる。
いい加減頭に来て、オレが何か気に入らない事でもしたか、って聞いても答えない。それなのにやたら小言ばかりが増えていって、だんだんとオレもしんどくなっていった。
言葉遣いを改めろとか、ボタンをちゃんと留めろとか。…この頃からだな、言われ始めたの。
何でだよ、って聞くと、あいつは決まってこう言った。
『ユーリは女の子だろう』
…って。
今なら理解できる。あの頃から、オレ達の感情が変化した。…違う。オレだけかもしれない。
気が付くとフレンの姿を探してる。あいつはオレに会いに来ない。だったらオレから行くしかない。
あれは中二の冬。
忙しいとかなんとか言われて、もう全然フレンの顔を見てなかった。さすがに受験を控えてれば仕方ないかと思うけど、限界だった。
だってさ、何も言ってくれないんだ。昔はなんでも話せたのに。オレのことが嫌いになったんなら、いっそばっさり言ってくれればいいのに。
三年のあいつのところに行くと、クラスの女に睨まれる。何で呼び捨てなんだとか、馴れ馴れしいとか聞こえてきて、あいつはモテるんだな、って思うようになっていた。
そう、オレはフレンの事が好きなんだ。いつの間にか、好きになってた。この頃にはもう、はっきり自覚してた。
だから限界だったんだ。どういうつもりでオレを避けるのか聞かなきゃ収まらない。
クラスの女はオレを無視したけど、男子生徒の一人がフレンの居場所を教えてくれた。そいつは何故か言いにくそうにしてたけど、理由はすぐ分かった。
フレンは同じ三年の女子生徒に呼び出されて、告白されてた。
…別に、覗くつもりじゃなかったけど。行ったら丁度、女のほうが何か言ってて、多分フレンも何か言って、女が泣きながら走ってったから…確定だろ。
あいつ、女を振ったりするんだ。そう思ってたら、フレンがオレを振り返った。
『いつまで見てるの?悪趣味だな』
…ものすごい久々に話すのにこれかよ、って思った。だからつい、憎まれ口を叩いたんだけど。
『相変わらずモテるな、おまえ。何で振ったの?勿体ないなあ』
『…勿体ない?』
『そ。可愛かったじゃん』
『好きでもないのに付き合えないよ』
『そんなのわかんないだろ?付き合ってみないと』
『付き合えない、って言ってるんだ』
『なんで?』
…なんで、か。何であんな事聞いたのかな、オレ。聞かなきゃよかった、って今でも思ってる。
まあでも、ここでフレンにあんな事言われたから、本気になったんだ。
そういう意味じゃ、聞けて良かったのか?
あいつはオレに、こう言った。
『他に、好きな人がいる』
そう言ってずんずんオレに近付いて来るから、ちょっと期待したんだ。なのにあいつ、そのままオレの横を通り過ぎ…ふと立ち止まると振り返って言った。
『…ユーリ』
『へ?な、なに?』
『学校では呼び捨てにしないで欲しい』
『…………』
酷くない?言うに事欠いてこれかよ。
『…なんで』
今度こそ、なんで、だよ。フレンはフレンだ。他になんて呼べっての?
『君が大声で僕の名前を呼び捨てにする度、友達に冷やかされるのが嫌なんだ』
…ちょっと傷付いた。
嫌、って言われるの、オレだって嫌だ。…冷やかされるの嫌、なんだな。
『だったらどうしろっての?シーフォさん、とでも呼べってか。舌噛みそうなんだけど』
『…先輩』
『は……はあ?』
『それなら短くていいだろ』
『フレン先輩、とか余計長いじゃん』
『先輩だけでいい。とにかく名前を呼ばないでくれ』
ほんの数ヶ月の差なのに、どうして学校ってところはこう、面倒臭いんだ。
同い年のはずなのに、なんでこんなにフレンが遠いんだろう。
そっか、好きな女がいるんだ。
で、オレには名前すら呼ばれたくない、と。
無性に腹が立った。
普通の女だったら完全に諦めてるとこだと思うけど、オレは違う。
何がフレンを変えたのかわからない。フレンはオレと距離を取りたがっている。
でもオレは、昔みたいにフレンと一緒にいたいんだ。好き、って自覚した以上、もっと近くにいたい。
だったらもう一度、フレンを変えるしかないよな?
オレはこの時決めたんだ。
あいつのほうから頼んで来るまで、絶対に名前を呼んでやるもんか、って。
先輩、なんて他人行儀な呼び方に、あいつが嫌気がさすように。
絶対、振り向かせてみせる。
覚悟してろよ?
セ・ン・パ・イ!!
ーーーーー
終わり