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第二話
シオンは黒のスポーツウェアを来て家を出た。ジョッシュの家にバイトの説明を受けるためにだ。ジョッシュからのバイトの依頼は今に始まったことではない。
「おぉ、なんだ割と遅かったな?ビビってこないのかと思ったぜ。」
「うっせぇよ馬鹿。で?内容は?」
「まぁ入れ俺の部屋で説明する。」
そう言ってジョッシュの家の2階にある彼の部屋に行った。
ジョッシュはかなりのオカルト好きで、少し広めの部屋なのに、どこに売ってるか想像もできない古本や、どう考えても騙されたとしか思えないクリスタルスカルのおそらく模型のようなものがところせましと並んでいる。そのせいかやけに狭く感じる
「で?今回は結構でかいバイトみたいだな。」
「あぁ、かなりでかい。報酬は・・・・そうだな。八割お前がもって言っていいぞ。」
「おいおいホントか?いつもは五分五分だろ?」
「まぁな。だけど今回は山があまりにもでかすぎる」
「と言うと?」
シオンは聞くと、ジョッシュは気まずそうな顔をしながら、にやりと笑い。
「報酬は全額で50万」
おぉ〜とシオンが声に出す。学生が稼げる額にしてはあまりにも大きい。
「バイト内容はいたって簡単。この小包を隣町のあるボロ屋に届けるだけだ。」
「おいおい、それ大丈夫なのか?麻薬とかなんかじゃぁ」
「その点においては心配ない。中身を少し調べたんでな。法的には問題ない代物らしい。もちろん脱法なんとかみたいなこともない。」
「そ、そうか、それならいいけど」
そう言ってジョッシュはその小包をシオンに渡した。その小包をシオンは受け取り、出発する時間までジョッシュの部屋で無駄話をしていた。夜の8時頃になって、ジョッシュが親戚のパーティーに行くことになった。それと同時にシオンも家を出る。ジョッシュは改めてシオンに「気をつけろよ。無理はするな」といった。聞いた覚えのある言葉だった。
バイトの内容は隣町のボロ屋に小包を届けること。時間は夜中の12時まで。
そのことを頭に浮かべながらシオンは町を歩いていた。時間はもう9時前だったが、時間的には問題なかった。人目につかないように街灯に当たらないよう歩いていく。ふとシオンはジョッシュが言ったことを思い出した。
「いいか?その小包を狙ってる奴が居るらしい。帽子をかぶった細身で背の高い男らしい。多分見ればすぐわかる。だが、会ったらダメだ何をされるかわからねぇ。あと、いいか?もし捕まったらバイトや報酬のことはきっぱり諦めてその小包を渡せ。そいつが何をしてくるかわからない。幸いそいつはあくまで狙ってるのは小包らしい。お前は危険な状況に身をさらすことになる。今までの、退学とかそんなレベルじゃない。最悪死ぬかも知れないからな。だから今回はお前が報酬の八割の40万なんだ。いいか?絶対に無理はするなよ。」
ジョッシュはそう言っていた。改めて思うとなんでこのバイトを受けたんだろうとシオンは思った。だがここまで危険でもこんなに大きい獲物を逃す訳にはいかない。シオンには金が必要だった。高校に入ってからジョッシュと知り合い、それ以来バイトを紹介してもらっている。シオンの母親はエマを産んですぐに体調を崩しそれから三年後に亡くなった。シオンの父親も、中学卒業の時に、仕事に行ったきり帰ってこない。実際は行方不明になっている。頼る親も親戚もいない。ここ数年間シオンはこういった夜のバイトで金を稼ぎ、妹のエマの入院費や、自分の学費を払っている。エマの難病はいつ治るかもわからない。ましてや治せる手段もない。だから少しでもエマを生かすために、シオンには金が必要だった。
そんなことを思い出しながら町をトボトボと歩いていると気が付けば隣町に入っていた。目的地はすぐ目の前になっていた。
気が付けばもう夜の10時を過ぎていた。無意識に足を運ぶスピードが早くなる。ここで先生に見つかればあまりにも呆気ないと思い、シオンはビルとビルの間の細い道を進んでいくことにした。ここなら先生に見つかることもない。そう考えながら細い道を進んでいく。ここを抜ければ大通りに出る、そこからは目的地のボロ屋は目と鼻の先だ。
そう思えば自然に顔が緩む
「あと少しで40万」
そう思えば自然に運ぶ足のスピードも自然に速くなる
「あと少しで40万」
時間が気になる。腕時計を見ながら
大通りに出た。
だが僅かに顔に浮かんでいた笑みも、もはや走るに等しかった運ぶ足のスピードも、一瞬にして凍りついた。
目の前に人がぽつんと車道のど真ん中に立っている。
驚く程に背が高く細身の体。暗闇の中でも分かるほどに白い肌。皺だらけの長いコート。深々とかぶった帽子。
例の男だ
ゆっくりと首を動かしながら周囲を見渡している。何かを探しているようだ。
シオンはなぜかは分からない、分からないが体が動かなかった。ただただ凍ったように動けなかった。
もう何十分もたったように思える凍りついた時間。まだシオンは動かなかった。いや動けなかった。
男はまだ反対側を見渡している。あまりにも首の動きが遅すぎるようにシオンに思えた。
ふと目の前にかざしたままだった腕時計を見る。まだこの大通りに出てきて4秒しか立っていなかった。
相手が動くのが遅いわけではない。シオンが感じ取る時間の流れが凍りついていただけだった。
その事実を再認識すると同時に、シオンが感じ取る時間の流れが通常に戻る
周囲を見渡していた男の首が一瞬でこちらに向く
深々とかぶった帽子の奥に隠れている目がシオンをとらえる
僅かに見えている口が不気味に笑い小さくこう言った
「・・・・・・・・・・・・・・・ミィツケタァ・・・・・」
第二話 END
BLOOD DREAM
俺は人間だったんだ。お前と同じ人間。でも、もう違うお前と同じじゃない。もう・・・・一緒にはいれないんだ。
第一章 人間終了
これは人の尊さを知る物語
夏の日がカンカン照りの日昼休みが二十分も過ぎたというのに、シオンはまだトイレの個室にこもっていた。
「お〜い早く出てこいよ。昼休み終わっちまうぞ!」
「まだ二十分あるだろ?まぁ落ち着けって、いまやっと出だしたとこだ。」
「いや、そんな状況を伝えなくていいから」
そう言ってジョッシュは深い溜息を吐いた
「まぁ、いいや夏だからって冷たいもん食い過ぎなんだよ。早く出てこいよ」
「あぁ・・・・わかった・・・・・っ!!」
明らかにわざとらしい力む声が聞こえると同時にジョッシュは男子トイレをいそいそと駆けて出て行った。
「まったく。サッカーの試合なんていいだろ。4対5でやってる時点でなんかおかしいんだよ。さて、どれどれ」
用をたし終えたシオンは蓋をしたトイレに腰を下ろし、シオンはポケットに大事そうにしまっていた携帯を取り出し電源を入れた。電源が入ると同時に連続でメールの着信音がなる。
「相変わらずだな。エマは」
そう言ってシオンはメールのチェックをする。彼の学校では校内での携帯電はの使用は禁止である。だが、彼の妹エマのメールチェックのために彼は昼休み携帯の電源を入れる。シオンは高校三年の18歳だが、妹のエマは小学六年の12歳である。さらに、彼女は生まれながらの難病で、病院の機器をつないだ状態でなければ生きられない。家にも帰れないエマを見てシオンが親に無理を通してエマに携帯を与えた。それ以来昼休みにメールを返信するのが、約束となってしまった。
エマはシオンが携帯を見れるのが昼休みだけと知っていても、ついついメールを送ってしまい、シオンが見る頃には5〜6通溜まっているのがデフォルトになっている。
「内容はいつもと同じようなもんか。」
ほとんど学校に通えないエマにとっては、学校に通えるシオンが羨ましいと同時に唯一学校というものがどんなものか知る情報源だった。だからか一通目のメールはいつも同じだった。また、それに丁寧に答えていくシオンもいつもと変わらない
『今日の学校はどんな感じ?』
「いつもどおり。数学と国語の授業は寝てたよ。真夏の暑い中先生たちも汗だらだらで、面倒くさそうに授業してたよ。」
『先生に怒られたりしなかった?』
「今日は特になかったよ、まぁ、寝てたからか起こすのに教科書の角を使われたけど、ありゃぁ暴行と何ら変わらないな。うん。」
『今日って体育がある時間割だったけ?だったらなにしたの?』
「いや、今日は体育はないよ。球技はもう終わったから、今度からは水泳とかかな?」
『休み時間って何してるの?』
「寝てる」
ここまでは普通だった。いつもと変わらない、何度聞かれたかも思い出せないような見慣れたメールの内容だった。
『もし、私が』
このメールを見てシオンの返信を打つ指は止まった。いつもは「もし、私が学校行ったらどんな感じかな」と言ったようなメールだ。しかし今回はその先がない。いや、正確には消していたような感じだった。それをご送信してしまったんだろうその証拠に
『さっきのメールは気にしないで。』
そう続いていた。
「何かあったのか?」
そうシオンは返信を送った。
おかしい
いつもなら返信するなり五分足らずで返してくるのに、もう十五分もたっている。シオンはトイレの個室を飛び出した。校庭から見ていたジョッシュが声を掛けるがシオンの耳には入っていなかった。
職員室の前で立ち止まったシオンは荒れていた息を整えて、いかにも体調が悪そうな顔つきで職員室に入った。幸い少し息が荒い
そして担任のところまで行き
「先生、具合が悪いので早退させてください。」
この作戦はうまくいった。すんなりと早退させてくれて、教室にバックを取りに行った。もう掃除も終わり授業が始まる直前だった。
クラスメイトが「早退するの?」とか「大丈夫」と声をかける中、ジョッシュは「気をつけろよ」とそう告げた。
大急ぎで病院に行った。エマの病室に行く頃には汗だくだった。
エマはいたって普通だった。ただ寝ているだけど特におかしいところはなかった。ただ恐ろしいくらいに静かだった。不意に心配になったシオンは頬を軽く叩いて、エマを起こした。少し機嫌悪そうに体を起こしたが、特におかしいところはなかった。エマがいつもならまだ学校にいるはずのシオンに気づいた
「・・・・・・?・・・・あれ?お兄ちゃん今日学校だったよね?」
「あ、あぁ、今日は急な会議でなちょっと早かったんだよ。よくあることさ」
「そうなんだ。でも、なんだわざわざ私のとこに?」
「あぁ、いや特に理由はないんだけどね。なんとなくだよ」
「ふ〜ん」
そういってエマは不意に窓の外をみた。シオンは携帯の件が気になりエマに尋ねた。
「そういえばお前、メール見なかったんだな」
「え?あぁ、寝てたからね。見なかったんだ。」
そういった携帯を握っているエマの手はどこか震えてるようにシオンには見えた。
そこから日が暮れるまでエマとくだらない話をしていた5時前になってシオンは帰宅し始めた。帰宅途中ジョッシュから電話がかかってきた
『おぉ、調子はどうだシオン?』
「あぁ、なんてことなかった普通に元気だよ。明日も余裕で学校にこれそうだ。」
『お?そうか意外だったなてっきり無理だと思ってたんだが。』
「何が?」
『悪いんだけどよ。俺の家に来てくれないか?期限が今日中なんだけどかなり大事なバイトを受けて欲しいんだ』
「なんで俺が?」
『いや、ホントは俺の仕事なんだけどよ。親が俺を連れて親戚の誕生パーティーにどうしても行くって言うんだ。んなもんどうでもいいのに。』
「どうしても今日中なのか?」
『あぁ、どうしても』
「わかった。やるよその仕事ていうか、バイトは夜なのか?」
『ホントか!すまねぇマジで助かる。バイトは夜だ!先生に見つかるなよ!』
「了解。んじゃぁ今からそっち行くよ」
『あぁ、わかった詳しい説明はこっちについてからな!』
そう言ってジョッシュは携帯を切った。シオンには電話をきる直前ジョッシュが笑ったような気がした
第一話 END