「アイギス様…ですか……?」
「……クラウス……」
ギルにクラウスと呼ばれた男はギルの姿に目を見張って驚き、ギルは先程までの表情が嘘のように無表情に変わった。
翡翠は何が何やらわからず、二人を交互に見る。
「ギルさん、あの人は……?」
「……俺がガキの頃、俺とルチアの世話をしてた執事だ」
「執事!?」
ギルの口から出た意外な言葉に今度は翡翠が驚いた。
そういえば、ギルは昔お坊ちゃんだったと聞いた事がある事を思い出し、クラウスを見る。
――でもどうしてその人がここに…?それに『アイギス』って…?
ギルを『アイギス』と呼んだクラウスを疑問に思う翡翠。
翡翠の疑問に答えるように、クラウスが口を開く。
「ギル…?アイギス様、その名は……?」
「俺はもう『オブシディアン家』じゃねぇから変えたんだよ。俺は追放された身だしな。『アイギス』は死んだ者としてるんだからちょうどいいだろ」
ギルの口から淡々と紡がれた言葉に翡翠は目を見開き、クラウスは悲しげな表情を浮かべた。
「……で?お前は何でこんなトコにいんだよ」
「この近くにお仕事でいらしているルチア様のお食事の後のデザートに使用する採れたての木の実を調達に……」
「へぇ、ルチア頑張ってんだな」
「我が妹ながらよく働くな」と呟きながら頭をかくギル。
クラウスは何か言いたげにギルを少しの間見つめた後、口を開いた。
「…アイギス様、『オブシディアン家』に戻られる気は……」
「ねぇよ。これっぽっちもな」
「………………」
「俺には今の生活の方が合ってる。
第一、100歩譲って俺が家に戻る気があったとしてもジジィ共が全力で拒否して阻止するだろ。
俺は『裏切り者』で『死んだ者』だからな。『アイギス』はもう『存在しない』。
もういないんだよ、どこにもな。もう忘れろ」
言って、ギルは翡翠の手を引っ張り歩き出し、慌ててついていく翡翠。
その後ろ姿にクラウスがまた声をかける。
「私はアイギス様が幼い頃からお世話をさせていただいておりました。
アイギス様がご健在である事、このクラウス…心から嬉しく思います。
出来る事ならば、私が皆様を説得しこのまま共に屋敷にお戻りいただきたく思いますが…」
クラウスの言葉に翡翠の肩がついピクリと反応した。
ギルはピタリと立ち止まり、振り返らずに言う。
「…言っただろ。『アイギス』はもう死んだんだよ。
今、ここに居るのは『ギル』だ。『アイギス』じゃない。
『亡霊』を追うのはやめろ。もうどこにも存在しないんだからな」
それだけ言い残し、ギルは翡翠を連れてその場を後にした。
遠ざかっていく、『あの日』よりもずっと大きくなった背を、クラウスは見えなくなるまで見送った。
「アイギス様…例え他の誰があなたを否定しようと私は…私とルチア様だけは、あなたを否定したりなどいたしません、私はいつまでも貴方の執事でございます…どうか、どうかそれだけはお忘れにならないでください」
例え他の誰が存在を否定しようと、私は貴方を否定などいたしません、と。
クラウスはギルの背に深々と頭を下げた。
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えーーー……………と……………………何が書きたかったんだっけ?←
なんか途中で飽きて強制終了した感バリバリなのは気のせいだと思いたいですまる。←
速見様、翡翠くんお借りしました!