話題:結婚
〜つづき〜
この依頼はやっぱり断ろうと思った
こんな野郎に女を紹介すること自体犯罪のような気がしてきたんだよ
障害の有無は別として、自分の考えを口にできないような奴に女を紹介しても結婚まで至らないだろうし、女の方にも時間を浪費させるようで申し訳ない気持ちになるし
だから、結婚についてもっと情報を集めて、現実を直視するのが先だと思いますよ、と言って帰ろうとしたわけよ
そしたらお母ちゃんが追いかけてきて「ほんと1人でもいいから見つけてきてくれない?結婚できなくても女の子と楽しく会話でもできればあの子も変わると思うのよね」と言って俺に頭を下げた
お母ちゃんは「今から色んなことを調べさせるから」と付け加え、拝むような格好までしたよ
そこまでされると断れないよね
仕方ないので、実は、既に1人見つけてあって、33の優しそうな人なんだけど話を進めてみますか?と聞いてみた
そしたらお母ちゃん物凄く喜んじゃって「宜しくお願いします!」と興奮気味に答えたよ
夕方塾に入ってすぐ、俺はM田のケータイを奪い、予め聞いてあった部品屋息子のアドレス宛にメールを送信した
「こんばんは、初めまして、M田H香です」てな感じで始まる文面のメールをね
そしてM田に、このアドレスから返事が来たら俺のケータイに転送するように指示した
M田の奴きょとんとしてたけど、「また何か企んでるな〜?」と楽しげに言うと、親指を立てるポーズをして消えて行った
俺がやったのは得意のなりすまし(笑)
だがこれしか方法が浮かばなかったのだ
山梨彼女のバイト先の33女には迷惑を掛けられないから
もし部品屋息子が発達障害の中でも人間関係を構築するのが難しいアスペルガーだった場合は返事が来ないと予想した
アスペルガーは言葉のキャッチボールがうまくできないのだ
身内など慣れた人とはほぼ普通に会話ができるのだけど、部品以外のことであまり話したことのない俺とは会話ができなかったことから考えて、息子はアスペルガーだと思った
予想通り返事が来なければ、メールが出来ないなら俺は手を引く、と言えるし、仮に返事が来ても、やり取りを数回続けた後にこっちが切ればいい
どっちに転んでもこの親子は俺には頼み辛くなるだろう
それが俺の狙い
悪知恵大魔王神田でした
ところがね‥
つづく