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〈メルスト〉年末年始〈まつかぜ夢〉

「ただいま……」

「まつかぜ!お帰り!宴会の準備できてるわよ」

「ああ……。…………もう着物着てるのか?」

「うん。帯がきついから、食べ過ぎ防止にもなるしね」

「そうか……。…………(似合っているな)。…!そのネックレス……」

「まつかぜにもらったやつだよー!可愛いでしょ?」

「ああ、着物にも合っているな…」

「ふふふ。……さ、入って!みんな待ってるよ!」

「ああ……」





「お、まつかぜ君!よく来たな!」

「待ってたわよ、まつかぜくん」

「こんばんは」

「頭!長旅お疲れ様でした」

「ああ。変わりないか?」

「はっ。問題ありません」

「そうか」

「さ、座って休んでて頂戴!○○、料理運ぶの手伝いなさい!」

「はーい……。……めんどくさい」





「じゃあ、今年も皆お疲れさん!乾杯!!」

「乾杯!」

「んー、美味しい!やっぱりお酒はいいわね〜」

「○○、飲み過ぎるなよ…?」

「大丈夫ー」

「頭、これ美味しいですよ!」

「ああ、いただこう(もぐ)」

「まつかぜの主くんも、楽しい年末を過ごしてるといいね」

「ああ、そうだな。主のまわりにはいつも人がいる。きっと、楽しんでいるだろう……」

「…ね、まつかぜくん。あなた、いい人いないの?(にやにや)」

「……は?」

「だあーかあーらあー!いい人よ、いい人!いないの?」

「母さん……」

「……いい人、ですか…………」

「(頭、頑張って!)」

「(我々は皆、頭を応援していますよ!)」

「そうですね………………。いい人はいませんが…………、気付いて欲しい人ならいます…………」

「…………(へえ…。まつかぜ、気になる子がいるんだ……)」

「……そう。気付いてくれるといいわね(バチコーン☆)」

「…!…………そう、ですね………(ちら)」

「…………(ごくごく)」

「…………(無理そうだな…)」

「……おかわりー」

「あ、はい。どうぞ、お嬢」

「ありがとー(ごきゅごきゅ)」

「……飲み過ぎだぞ」

「へーきへーき」

「………………(不安だ…)」





「………………Zzz」

「あらら。寝ちゃったわね。……ま、あの勢いで呑んだら当然よねえ……。……まつかぜくん、悪いんだけど、○○を部屋に寝かしてきてくれない?布団は先に敷いておいたから」

「あ……、はい、わかりました(肩に担ぐ)」

「(頭!そこはお姫さま抱っこでしょう!)」

「(まあ、まつかぜくんらしいけどね…)」





「(布団に下ろす)…………やれやれ、飲み過ぎないようにと言ったはずなんだがな……」

「……Zzz」

「…無防備だぞ……。男の前で……」

「…………まつかぜなら、大丈夫だもん…」

「……!起きたのか……」

「…………まつかぜ、好きな子いるんだね」

「…………お前はどうなんだ……」

「………………私は、気づかないようにしてるの。自分の気持ちに…。…………邪魔したくないから」

「………………邪魔?」

「そう。……邪魔したくないの。余計な負担になりたくない……」

「………………」

「でも……、今夜はちょっと、わがままになっちゃうんだから……!(ぐいっ)」

「……っ!?(ぼふっ)な…、○○……!?」

「んしょ……(馬乗り)ふふふ、捕まえたー!(ぎゅー)」

「っ……おい……!?」

「まつかぜ……(ぎゅ)」

「………………っ(近い…!)」

「………………私……」

「………………(ちゅ)」

「んっ!?」

「酒臭いな……(苦笑)」

「悪かったわね……!」

「…………、はは……。やはりオレは、お前がいい……(ぎゅ)」

「まつかぜ……?」

「……負担になんて、ならない。全く問題ない。……だから…………」

「………………(ぎゅ)」

「………………好きだ」

「……うん…………」

「………………やっと、通じたな……」

「………………今夜は、ずっと一緒ね」

「…………な!?」

「いいじゃないの。年末年始、一緒に居よう?」

「…………仕方ないな……。だが、それなりに覚悟しておけよ…?」

「え」

「……オレも、男だからな…………(ぎゅう)」

「………………(ぎゅ)」





「まつかぜ、まつかぜ!起きて起きて!」

「む…………、お前、元気だな……。どうした…?」

「ほら、初日の出だよ!」

「!」

「いい天気で良かったね。眩しいなあ……」

「○○」

「ん?」

「(ちゅ)今年もよろしく…、いや、今年から、か……」

「………………、うん……」


まつかぜの恋はやっと成就したようです。

〈メルスト〉冬想祭と恋うさぎ〈まつかぜ夢〉

「………………賑やかだな……」

「冬想祭ですからね……。あちこちに店も出てますし」

「まつかぜさんはこういう場所は苦手なのですか?」

「いや、別に……。特に得意でもないが…………(あいつは、好きそうだな……)」





「さあ、ついたわよ!」

「うわあー!!すごいすごい!店も人も見慣れない格好してる!」

「いやあ、丁度旅の癒術師が村に来てくれてよかったな!家族旅行なんて何年ぶりだか!!」

「今日は楽しみましょ!はい、○○、軍資金」

「え」

「たまには、お父さんとデートさせてちょうだいな」

「ははは、母さんは相変わらずだな!そういうわけで、○○。悪いがまた夜にここで待ち合わせだ!」

「え、ちょ…!……行っちゃったよ…………。まったく、自由なんだから!……ま、いいわ。お金は貰ったし、私もお一人様を楽しもうじゃないの!まずはー……あの店からよ!」





「………………(自由にしていいと言われたし、土産を探すか…)む……?」

「うあ〜……可愛い……」

「……な…っ!?(何故あいつがここに!?)」

「むう…。欲しいなあ……可愛いなあ……」

「………………○○」

「へ?え、まつかぜ!?何でいるの!?」

「それはこちらのセリフだ。村守はどうした?」

「松風衆に頼んできた。父さんと母さんも来てるよ」

「今、村に癒術師は…?」

「旅の癒術師さんに頼んできた」

「そうか…………」

「で、まつかぜはどうしてここに?」

「オレは、主に着いてきただけだ。今は自由にしていいと言われている」

「そう」

「…………、ご両親は?」

「デートしてるよ」

「……お前を置いて…?」

「二人が自由なのはいつものことじゃない」

「…………仕方ない、今日はオレが付き合おう……」

「別にいいよ。まつかぜだって、久々の休みなんでしょ?」

「…………なら、言い方を変えよう。…今日は、傍に居させてくれ」

「……そこまで言うなら…」

「(これでナンパされる心配はないな…)……やれやれ……」

「んー…可愛い……」

「さっきから、何をそんなに熱心に見ているんだ?」

「これ!ユキンのぬいぐるみ!」

「ぬいぐるみ……。……意外と子供っぽいな…………」

「む。でも可愛いじゃない!大きいのは無理だけど…、ちっちゃいの買お!すみませーん!この子くださいな」

「………………(ユキンが好きなのか…)」

「……えへへ〜、買っちゃった!」

「よかったな」

「うん!次はどうしようかな。食べ歩きとか、どう?」

「お前がそうしたいなら、付き合う」

「ありがと!じゃあねえ…、あの屋台の食べたい!」

「ああ…。……走ると転ぶぞ」

「平気だよー!」

「まったく……」





「(もぐもぐ)うん、なかなか美味しいね」

「そうだな。村ではあまりしない味付けだ」

「…………あ、ホットワイン発見!買ってくる!」

「だから、走ると…、聞いてないか……」





「お待たせ。はい、まつかぜの分」

「オレのも買ってきてくれたのか…。ありがとう」

「どういたしまして!…(ごくん)あー…温まる〜…」

「ん、旨いな……」

「…………ねえねえ、ちょこちょこ見かける、民族衣装ちっくなあれ、なんなのかなあ……?」

「…あれは……、ミルカという民族衣装だそうだ」

「へえ〜…。結構可愛いね。いいなあ。買って帰ろうかな」

「……ミルカは、プレゼントしてもらうのが普通だ」

「そうなの?じゃあ、まつかぜ、買ってよ」

「っ!?げほ、げほ…っ!…………本気か?(ある意味それは、告白にもとれるが…)」

「だって、プレゼントしてもらうのが普通なんでしょ?じゃあ、自分では買えないじゃないの。お金は出すから、買ってきてよ」

「……………………(そういうことか…)…………わかった。買ってくるから、少し待ってろ……」

「はーい!」





「………………(まさか、ミルカを買うことになるとは…。……あいつは多分、ミルカの持つ本当の意味を知らないんだろうが……)………………これにするか」





「まつかぜ遅いなあー……。……、ホットワインおかわりしちゃお」





「ただいま…」

「あー、お帰りぃ〜」

「な……っ!?この短時間に3杯も呑んだのか!?」

「ふふふ〜…あと一杯くるよお〜」

「まったく……!もう、やめておけ。二日酔いになるぞ」

「大丈夫だよう……」

「駄目だ。次の一杯はオレが呑む。お前は水にしておけ」

「う〜……まつかぜ、意地悪だあ〜…」

「意地悪で言ってるんじゃない……」

「ホットワイン、お待たせ致しました」

「ありがとうございます。すみませんが、水をください」

「畏まりました」

「むー…まつかぜのばかー」

「なんとでも言え……(ごくん)」

「……バカバカバカバカ…………」

「はあ……」

「お待たせ致しました、お水です」

「ありがとうございます。……ほら、水飲んで落ち着け」

「うー…………(ごくごく)」

「…………旨いワインだから、呑みたくなる気持ちはわかるけどな……、呑み過ぎはよくないぞ」

「…………むー…」

「…………ほら、ミルカ買ってきたから」

「!わぁーい!ありがと、まつかぜ!いくらした?お金払わなきゃ」

「…………いい。オレからのプレゼントだ……」

「いいの?やったね!ありがとう!」

「ああ……」

「えへへ〜…嬉しいなあー」

「……………………ごちそうさま。……そろそろ夜だな…」

「…?何かあるの?」

「確か、ダンスの催しがあると聞いている」

「へえ〜…」

「……参加するか?」

「……ううん、別にいい」

「そうか……。てっきり参加するって言うと思ったが……」

「……踊るより、まつかぜと一緒にいたい」

「……な…っ……!」

「……嫌…?」

「……、嫌なわけ、ないだろう……」

「えへへ〜…よかった……」

「……酔っているな…大丈夫か?」

「平気ー」

「………………、ちょっと来い」

「んー?なあに?どこ行くの?」

「いいから……(ぐい)」

「……?」





「……ここなら、人目もないな…」

「まつかぜ…?」

「…………○○」

「ん?」

「…………っ、すまない……(喉に口付け)」

「んっ…、まつ、かぜ……?」

「…………オレも、酔ってるな……。いつも以上に、お前が可愛く見える…………」

「……酔わないと、可愛く見えないんだ……」

「いつも以上に、と言ったはずだが……?」

「むう……」

「…………、そうだ、さっきミルカと一緒に買ったものがあるんだ」

「…なに?」

「これを……」

「ユキンの、ネックレス……?」

「ユキン、気に入ってるみたいだったから……」

「可愛い……。ありがと…!」

「ああ……」

「…………年越しは、帰ってくる?」

「わからないが……、主に頼んでみよう。きっと許可してくれるだろう」

「うん。一緒に年越し、楽しみだね」

「ああ……」

「……、まつかぜ」

「なんだ?」

「(頬に口付け)」

「っ……!」

「お返し」

「……お前な…………(離れがたくなるだろう……)」

「じゃあ、今度は年末にね!」

「ああ…。一人で大丈夫か?」

「大丈夫。父さんと母さんと待ち合わせたの、そんなに遠くないから」

「そうか。気をつけろよ…」

「うん!またね!」

「ああ」


冬想祭のお話。

〈メルスト〉松風衆と女将〈まつかぜ夢〉

「頭…!あれほどまでにお嬢のことを……!」

「本当に、我々の頭は一途だな…!」

「涙ぐましい……!」

「こうなってくると、少しお嬢を憎く思ってしまうな……」

「よせ。お嬢の鈍さは生まれつきだ。それに、そんな風に思ったら、頭の想いを否定することになるぞ」

「わかっている、冗談だ」

「だが、確か、頭とお嬢は許嫁関係にあったはずだが……」

「それはね。あの子達には教えないって約束で結んだものなのよ」

「女将!!」

「何故そのような……」

「だって…、許嫁がいる、なんて言ったら、あの子、自由に恋ができないじゃない?」

「しかし、お嬢が頭を選ばなかったら……」

「それはないわね」

「何故、そう言い切れるのですか?」

「あの子は、私の娘だからよ。自分の子供の考えることぐらい、敵の動きを読むより簡単よ!」

「……親子の絆というわけですか…………」

「そういうこと。あの子が恋に気付いたら…、変わるわよ」

「と、いいますと…?」

「んー……秘密」

「え」

「ふふ、変わった後のあの子は、まつかぜくんだけ知ってればいいわ。彼もきっと、見せたくないと思うだろうし(クスクス)」

「……?」

「さて、村の再生にかかるわよ!」

「は、はい!」


実はみんなが見守っている、二人の恋路。

<メルスト>約束<まつかぜ夢>

『まつかぜ!まつかぜしゅうのおしごとについていくってほんとう!?』

『よくしってるな…。……きょうから、ちちうえのしごとについていって、いろいろべんきょうするんだ。おれは、ちちうえのあとをつぐんだから』

『そっか……。きをつけてね……』

『…………だいじょうぶだよ。ちゃんとおまえのところにかえってくる。…………やくそくだ』

『…うん……!』







「…………。随分懐かしい夢を見たわね…。……まつかぜは、今頃どこにいるのかしら…」

「くるっぽー」

「!伝書鳩…。まつかぜから……?」


―そちらに癒されていないモンスターの群れが向かっていると情報が入った。急ぎ、避難しろ。―


「癒されてない、モンスターの群れ…!?…っく、父さん!まつかぜから伝書鳩が……!!」





「(間に合うだろうか……。主も急いでくれているとはいえ、まだ少し距離がある…。無事だといいが……)」





「まずいな、まだボスの姿はないとはいえ、規格外レベルがゴロゴロいやがる…!○○!そっちはどうだ!?」

「こっちも同じ!父さんだけじゃ、癒しきれないよ!」

「今母さんが松風衆に援軍を頼みに行ってる!もう少し踏ん張れ!!」

「うん!!」





「ついた…!」

「みゅ!?大変です!もう村にモンスターが雪崩込んでるのですよ〜!!」

「…!一部の村人が応戦してるみたいだ……!まつかぜさん、避難の連絡はしたんですよね!?」

「……あいつ………!!」

「まつかぜさん!?」

「一人じゃ危険なのですよ〜!!」





「はあっ!!…っ父さん、そっち行った!」

「おう!癒すのは任せろ!!」

「ギャアアアァァ!!」

「!!群れのボス!?しまっ…」

「……○○!!」

「ひゃあっ!?」

「…っく…………大丈夫か……?」

「まつ、かぜ…………?」

「……今は、ボスを癒そう。オレの主も来ているから、大丈夫だ」

「…っ、うん……!」

「まつかぜさん!大丈夫ですか!?」

「主!今はボスを癒すのが先だ!オレの事は構うな!!」

「あ、ああ…!わかった!」





「ふう…。あらかた癒したな。この村に癒術師がいて良かった…」

「兄さん、若いのにやるなあ!将来有望だ!」

「あの…、いや、……ありがとうございます………」

「ところで、まつかぜさんはどうしたのです?さっきの女の人も……」

「ああ…、ま、彼のことは娘に任せておけば大丈夫だ。……邪魔しちゃ悪いしな…?」

「(ピーン!)そういうことなのですね!」

「は?何が?」

「鈍いのですよ〜…」

「ははは!さて、俺は被害の確認をしないとな。…兄さん、手伝ってくれるか?」

「え?あ、はい…」





「っの、バカ!前線に出るなって言ったじゃないの!!」

「………………」

「まったく…私を庇って怪我するなんて……」

「……お前こそ、何故避難しなかった?」

「村守なんだから当然でしょ!……私が守らないと……!」

「…………怪我はないか?」

「私は平気!かすり傷程度よ。…私を誰だと思ってるのよ。村最強の戦い手よ?…………自称だけど」

「………………」

「はい、手当ておしまい。でも肩に結構深い傷だから、なるべく動かさないこと。お風呂も禁止!…体拭くぐらいはしてあげるわ……」

「………………」

「まつかぜ?」

「どこを怪我した?」

「え?脚とか腕とか…、かすっただけだけど」

「………お前が傷つくのは、嫌だ…………。例え、かすり傷でも……」

「な…っ」

「………………守れなくて、すまない…」

「…………バカ。……なによそれ、ずるいじゃないの……」

「………………」

「私は、まつかぜの帰る場所を守りたかっただけ。逃げるなんてできないよ」

「………………オレの帰る場所……」

「約束、したじゃないの」

「…………そんなことで……」

「な…、そんなことって何よ!バカ!もう知らない!!……夕飯まで絶対安静だからね!(スパーン!!)」

「………………オレの帰る場所……か」





「…………はあ…。私もまだまだね……。もっと強くならなくちゃ。…まつかぜの帰る場所、私が絶対守るんだから……!」

「あ、さっきの…」

「!君は……、まつかぜの主くん。いつもまつかぜがお世話になってます。それに、さっきはありがとう。父さんと私、村にいる松風衆だけじゃ対処しきれなかった。本当に助かったわ」

「いえ…。あの、まつかぜさんは……?」

「…肩に、深い傷を。しばらくは安静にしてないとダメね……」

「そうですか……」

「まったく…。あいつ、耐久力紙のくせに、無茶するんだから……!」

「それは、あなたのことが大切だからだと思うのですよ〜」

「あら…、変わったペットね……」

「みゅ!?ペ、ペットじゃないのですよ!メルクなのですよ!」

「あ、そうなの?ごめんね。じゃあ、こっちのダイフクみたいながペットかしら?」

「キュ!?キュー!キュー!!」

「あ、いや…。こいつはトト。相棒…ってやつ、かな……」

「キュ!」

「そう…。それは失礼。私は○○。この村の村守で、まつかぜの幼なじみよ」

「まつかぜさんの…幼なじみ……」

「成る程、納得がいった」

「…?何が?」

「いや、前に行った町で、まつかぜさんが…」

「だ、ダメです!!それ以上は言っちゃダメなのですよ〜!!」

「もがっ!?」

「(不器用なまつかぜさんなりのサプライズなのですよ!あのことは秘密にするのです!!)」

「(よくわからんが……、…わかった)」

「まつかぜが、何?……まさか、何かやらかしたの!?」

「へ!?あ、いえ!!なんでもないです!!」

「なのです!!あっ、○○さん!松風衆の方にも、まつかぜさんの容態を報せた方が!」

「ああ、そうね…。行ってくるわ」

「ほっ……」





「オレの、帰る場所……」

「(シュタッ)頭!ご無事で!?」

「問題ない。○○の手当てはいつも的確だ」

「…そうですか……。大事なくて良かったです……。頭を失ったら、我々は……」

「村にオレがいない間は○○のお母上に従うよう、言ってあるだろう。……それが、ずっとになるだけだ」

「頭……。……そんなことを言うと、お嬢に怒られますよ」

「……そうだな…………。あいつは、いつもそうだ……」

「…………。頭の無事も確認できましたし、私は、戻ります。日も落ちてきました。お体を冷やさないよう……」

「ああ……」





「まつかぜ、大人しくしてた?夕飯よ」

「……すまない」

「謝るぐらいなら最初から怪我しないでよ、バカ。…ご飯の後は体拭くからね」

「ああ……」

「…………はい、おじや。熱いから気をつけて」

「ん……。…………(もぐ)…………久しぶりに食うが…美味いな……」

「おじやは得意だからね!」

「(もぐもぐ)」

「………………」

「(もぐもぐ)」

「ふふ…」

「む……?どうした……」

「なんでもないよ。…ちょっと、嬉しいだけ」

「……そうか……(もぐ)」





「……ごちそうさま」

「はい。じゃあ私は食器洗って、タオル用意してくるから。……あんたは大人しくしてるのよ」

「ああ……」





「…………土産、いつ渡そうか……………。…喜んで……くれるだろうか…………」

「お待たせ。ちゃんと大人しくしてた?」

「ああ……」

「じゃあ、ほら。脱いで」

「…………恥ずかしげもなくよくそんなことを…」

「っな…!バカ!!病人相手にそんな気起きるわけないでしょ!!」

「冗談だ。(上だけ脱ぐ)…これでいいか?」

「…………うん…。じゃあ拭くよ」

「ああ…………」

「…………(背中、広い…)」

「………………」

「……………傷、増えたね……」

「……そうか?……自分では見えないからな…」

「薬、塗るよ」

「ああ……。……っ…!」

「染みるけど、我慢なさい」

「……っ、ああ…………」

「………………(ぬりぬり)」

「……○○」

「んー?何?痛い?」

「いや…、その……。…………これを」

「…これは…?」

「…………前に行った町で買った。……この辺りには咲かない花のしおりだ」

「…!」

「………………いつも、心配かけて悪い」

「……お土産ってわけね…。……ありがと。丁度しおりが欲しかったのよ。………何でわかっちゃうんだろうね………。幼なじみって、言葉以上にすごいものなのかもね。ふふ」

「…………オレは、幼なじみだから、という訳ではないと思うがな………」

「………どういうことよ(包帯巻き巻き)」

「…………………通じているんだろう……」

「………何が?」

「………………、まだ、早い、か…」

「…?」

「いや…なんでもない。………、村守、これからも頼むぞ」

「………任せて!」

「…………なあ、約束、覚えてるか………?」

「……覚えてるわよ。……夢に見るくらい鮮明にね………」

「……あの時、オレが言ったのは……、この村のことではない……」

「え…?」

「いや、この村のことも確かに含まれるのだが………。それ以上に………。……オレが帰ると言ったのは……、オレの、帰る場所は………」

「…………」

「………お前だ………」

「………!…………っ、バカ……(後ろからぎゅ)」

「………………(手を重ねる)」

「………………。怪我、しないでよね……。面倒みるの、大変なんだから………………」

「………ああ」

「約束ね」

「……努力する」

「……約束はしてくれないんだ………」

「悪い。仕事柄、怪我は付き物だからな……。だが、一度した約束は必ず守る。……お前の元に必ず帰る……」

「………ん」


約束。
遠い日の思い出。

<メルスト>幼なじみ以上、恋人未満ギリギリ<まつかぜ夢>

「…まつかぜ」

「…………」

「あんたねえ、防御力も攻撃力もないのに、素早いからってだけで前線に飛び出して行くのやめなさいよ」

「…………実は、今の主からの命で、仕方なく最前線で戦っているのだ」

「嘘つけ」

「む…バレたか」

「当たり前でしょ。何年幼なじみやってると思ってるの。それに、今の主人は優しい子じゃないの。命令なんてできる夕イプじゃないわ」

「………………」

「全く、いつも怪我して帰ってくるんだから…。いくつ薬があっても足りやしないじゃないの。薬もタダじゃないのよ?」

「それは…すまない……」

「わかってるなら、怪我しないようにしなさいよ。あんた、松風衆の頭でしょ?」

「…………」

「……何よ」

「……いや。怪我をしなければ、お前に会えないと思ってな……」

「………バカ?」

「む…………」

「会いにくればいいじゃない。別に、理由なんてなくても構わないわよ。今更、そんなこと気にする年でも、そんな間柄でもないでしょうが」

「しかし、用もないのに会いにくるというのは……」

「気が引ける?」

「ああ……」

「なら、お土産でも持ってきなさいよ」

「土産……?」

「そ。旅先の珍しいものとか、名物とか。なんなら、その辺で買ったお団子とかでもいいわよ」

「そんな物でいいのか?」

「十分じゃない。茶菓子があれば、お茶会はできるわよ。それに、あんたの怪我が土産ってのより、よっぽどマシだわ」

「……そうか」

「そうよ。私はあんたの薬箱じゃないんだから」

「……なら、お前はオレの何なんだろうな…」

「知らないわよ。幼なじみじゃないの?それとも腐れ縁かしら?」

「いや…もっとこう……」

「?」

「むう……。難しいな。なんと表現したらいいのやら」

「…………本当に、バカ」

「……悪かったな」

「冗談よ。あんたがそこそこ頭いいのは知ってる。頭だもの、部下をまとめなきゃならない立場だしね」

「…………」

「何よ?」

「いや……(そういう意味ではないのだが…)……相変わらず、鈍いな…」

「は?あんたに言われたくないわよ、バカ」

「む……。確かに、オレも鈍い方だとは思うが、お前程ではないと思うぞ……」

「うるさい、バカ!」

「……はあ…。よくわからんが……とりあえず、言葉には出来ない深い仲ということでいいか?」

「もういいわよ、それで。考えるの面倒くさいし」

「………オレは、好いているがな……………」

「何か言った?」

「いや、なんでもない。…次に来る時は、土産を用意してくる」

「ん。期待してるわ」

「ああ……」

「………行ってらっしゃい」

「行ってきます……」



言葉にできない、もどかしく、微妙な距離感。
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