中学二年の9月、いじめで俊介が自殺した。
気弱で目立っていた俊介は、学年でも荒れていた三島と根本に目をつけられ、からかわれ、いじられていた。次第に堺という仲間が出来た事で、いじめと形を変えて暴力やかつあげ、万引きと酷くエスカレートしていった。
しかしクラスメートは皆、俊介を庇えば自分が標的になると思い、俊介を生け贄にして放置した。そして俊介は好きだった小百合にも拒否された事で、自殺する。
葬式に参列させられたクラスメートはそこで、マスコミによるいじめ自殺の興味の目を目の当たりにする。
俊介は遺書を書いており、そこにはいじめ首謀者の三島、根本に対する恨み、そして親友として俺、ごめんなさいと小百合の名指しがあったのだ。
親友ではない、仲良く遊んだ記憶もない俺は複雑だった。
ナイフで刺された気持ちと、十字架を背負った気持ち。あなたはどっちという問いかけに、俺は答えられない。
『十字架』
著者 重松清
発行元 株式会社講談社
ISBN 978-4-06-215939-5
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
癌である父を見舞う為、足繁く田舎に帰る俺は、少しずつ死に近付く父を思う気持ちよりも、リストラされ、再就職先も決まらず、情けないが旅費として父から貰えるお金の差額が欲しくて来ているところもある。田舎からの帰り道、もう死んでもいいかなと考えた俺の前に、古いオデッセイが停まり、助手席の健太に「遅かったね」と声をかけられる。
知らない親子の車に迷う事なく乗った俺は、知らない人のはずなのに、父があと4・5日しかもたないだろうと言い出す。一体この親子は何者なんだと考える俺に、不器用なのに家族でドライブがしたくて免許を取った父が、事故を起こして亡くなった新聞記事を読んだことを覚えているかと聞く。自分達がまさに、その親子なのだと。
後悔と悔しさから成仏出来なかったのだという2人と共に、車はどんどん走っていく。
死んだはずのヤケにフレンドリーな親子は、大切な場所に連れていってくれる。
『流星ワゴン』
著者
重松清
発行元 株式会社講談社
ISBN 4-06-274998-X
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。
生まれて間もなく母親を亡くしてしまったヤスは、母の兄夫婦の養子となった。ヤスを手放した父親は再婚したきり音信不通で、ヤスには父の記憶もない。家族とは一体何なのか分からなくなっていたヤスは、同じく家族の縁が薄い美佐子と結婚した。二人が夫婦となり、とうとう息子・アキラが出来る。
ますます仕事に精が出るヤスは、幼なじみの昭雲夫妻やたえ子ねぇちゃん、職場の人間に恵まれ、失敗しながら成長する姿を描く。
美佐子の子だからこそ自分がトンビでも、鷹の様に出来た子供だと信じて疑わないヤス。
アキラが3才になり、言葉を喋り始めた頃、珍しくグズったアキラは美佐子と共に、ヤスの会社へ遊びに来た。高度経済成長期、どんどん忙しくなる仕事場は、溢れんばかりの荷物で一杯だった。汗だくのヤスに差し入れをと美佐子が持ってきたタオルを、アキラが振り回しながら荷物の間を走ってきた。
タオルは積み荷に引っかかり、アキラに降りかかろうとした積み荷からアキラを守った美佐子は、そのまま死んでしまったのだ。ヤスとアキラは、父子家庭になってしまった。
『とんび』
著者
重松清
発行所 株式会社角川書店
ISBN 978-4-04-364607-4
以下、追記で感想なので、ネタバレする上に主観入ってます。読んでない方や苦手な方はブラウザバックでお願いします。