昔々、有る町に一人の男が住んでました。

彼は町の皆から「ペドロリーノ」と呼ばれていました。
町の皆は彼の本当の名前を全く知りませんでした。

彼は毎週土曜の夕方になると街角の広場で滑稽なことをして町の皆を笑わしてすごしていました。
その時間になると町の人皆が彼の滑稽な芸を見に集まりました。

彼は
「どんなに罵られても皆が笑ってくれるのなら何でもしよう」
と考えていました。


ある日彼は恋をしました。
最近この町に引っ越してきた女性に一目惚れ。


彼女は彼の見世物を見に来ていたのです。
彼はショーが終わった後に彼女が彼に微笑んでくれたことがずっと頭から離れませんでした。

それから彼はいっぱい芸の練習をしました。
皆に喜んでもらう為に。
彼女に振り向いてもらう為に。

ある冬が明ける頃の土曜日。
見世物が終わったあと、彼は決心し彼女に精一杯愛を伝えました。

しかし彼女は、
「貴方は周りから馬鹿にされて笑われるのがお似合いよ」
と彼に言い振ってしまいました。

その夜、彼は気付いてしまったのです。
「僕は愚かな事をしないと皆から見てもらえない…愛してもらえない」
のだと。

それから彼は三日三晩考えました。
どうしたら見てもらえるか、愛してもらえるか。

でも自分には愚かな事をして皆に笑われることしか思いつきませんでした。

…しかし金曜日の朝、彼はいい事を思いつきました。

「誰からも見てもらえないのなら…愛してもらえないのなら……皆、皆…」
"殺シテシマエバイイ"

次の日、彼はいつも通り街角の広場、いつも通りの時間にいつも通りの見世物を開きました。
いつも通り大盛況でした。いつも通り彼女も見に来ていました。

ただひとつ違っていたのは……
彼の心でした。

見世物が終わった後……


彼は隠し持っていたナイフを見に来ていた皆…彼女に向かって振り回し…


あっという間に老若男女問わず何人も何人も殺してしまいました。



そして春が始まる頃、彼…ペドロリーノは大罪人として囚われ処刑されてしまいました。