司令室では西澤が蔦沼に「紀柳院が北川さんに会いたい」主旨を伝える。

「やっぱりそう来るとは思ってた。北川とはコンタクトを取っているところだよ。紀柳院のことを言ったらすぐに反応したからね。
彼は紀柳院に会いに来るだろうよ」
「既に連絡していたんですか…」

「北川なしではこの戦い、きっついからね〜。何のための『臨時隊員』だい?」



ゼノク周辺では激しい戦いが繰り広げられていた。


「館内へなにがなんでも侵入させんなっ!!」

御堂が銃撃しながら叫ぶ。鐡はものすごく素早い動きで鳶旺(えんおう)を捉える。そして一気に距離を詰めた。

「よぉ、ジジイ」
鐡はニヤニヤしてる。
「鐡…なぜここに!?」

鳶旺は言葉こそは動揺していたが、背中からまるで血管のように枝分かれした赤黒い棘を展開させている。


「てめぇら元老院をぶっ潰しに来たんだよ」

鐡は鳶旺を自分に注意を引き付けている。あの棘の殺傷力はかなり危険なのは承知の上で。


彩音達は戦闘員と乱戦。ゼノク館内は防衛システムで防弾シャッターが閉じられてはいるが、病院はその性質上、防弾シャッターはない。堅牢な外観とシールドのみで病院は守られている。


晴斗はブレードを発動。刃が赤く発光。
「侵入させるかあああああ!!」

晴斗は一気に戦闘員を撃破。いつの間にか通常発動で戦闘員を複数撃破出来るようになっていた。
彼は確実に成長している。



ゼノク・組織直属病院。
鼎は外で物音が激しく聞こえるのを感じた。本能的に嫌な予感がする。

「また元老院が襲来したのか…?」


病院はどこか慌ただしくなっていた。一体外では何が起きている?
そんな鼎の病室に1人の男性が姿を見せる。


「あなたが紀柳院鼎さんだね。ここにいると危ないから地下へと避難しよう。君は狙われている。動けるか?」

「な…なんとか…」
鼎は戸惑いを見せる。
「この病院は地下へ避難出来るようになってるんだ。手を貸そう。ゆっくりでいいからね」


この優しい声…まさかそんなわけ…。鼎はようやく顔を上げた。
そこには見覚えのある人が手を差し伸べていた。


「…北川…さん?」
鼎は信じられないような声を出す。鼎の顔は見えないがどこか明るく見える。

「詳しい話は後だ。俺は長官から要請されて来たんだ。とにかく地下へ避難すればあなたは大丈夫だから。急いだらダメだ。せっかく塞がった傷口が開いてしまうかもしれないだろ。ゆっくりと動いてくれ」

「…はい」


なぜ北川さんが?長官に要請されて来たと聞いたが…。


ゼノク病院の地下がシェルターになっているなんて知らなかった。病院の避難所なだけあって広い。



桐谷はゼノク周辺・ゼノク全体にシールドが張られているのをいいことに、マシンガンやロケット砲で戦闘員を蹴散らしている。
シールドで被害が最小限だから派手な攻撃も可能。

「邪魔はさせませんっ!」


上総(かずさ)・二階堂・粂(くめ)・三ノ宮のゼノク主要隊員も戦闘員と乱戦。
三ノ宮は敵の位置を把握していた。

「西館が手薄です!このままだと侵入されます!」
「三ノ宮、西側は俺がやる」

そう言ったのは御堂。
「お前1人だとバランス悪い。俺も行かせてもらうぞ」
「イチもかよ。ま、いっか。ゼノク内部には侵入させねぇ!」

2人はダッシュしながら戦闘員と戦闘。



晴斗と鐡は不思議な連携で鳶旺と交戦中。

「暁が来るとはな…」


鳶旺は目の前の晴斗に攻撃しようと棘を仕掛けつつ、黒い稲妻を展開。
鳶旺は確実に病院を狙っていた。棘と稲妻は病院へ一直線に向かう。

このままだと鼎さんがっ!
晴斗は焦りを見せた。



病院の地下シェルター。

北川は鼎に日本刀型ブレード・鷹稜(たかかど)を渡す。


「今の私にはまだ戦えない…。怪我はまだ回復していないのに…なぜ?」
「『戦う』ってのは直接じゃなくてもいいんだ。強く思うんだ。あなたの鷹稜が共鳴するかもしれないよ」


共鳴…?


「北川さんは何か知っているのか?あの時私を匿ったのは北川さん…なんですよね…?」
「そうだ。あなたを守るために居場所を失った紀柳院を組織の施設に匿った。守るために」


鼎は真実を知り、泣きそうになるが抑えてる。


「都筑家の能力はあまり表には出ないが、その鷹稜を媒介にすれば解放されると思う。
あなただって守りたい大切な人、いるんだろう?」


私はいつの間にか大切な人が出来ていた…。組織を通じて仲間が出来たから。


鼎はブレードを抜いた。刀身が淡く光っている。


「鷹稜は共鳴しているみたいだね。紀柳院の能力は直接戦えなくても効果を発揮出来るものなんだ」
「直接『戦えなくても』使える…?そんなこと…可能なのか」

「鷹稜を媒介にすれば可能だよ。都筑家は物を媒介してこそ、能力を発揮していたことが判明したんだ。詳しいことは聞かないでくれ。
俺はずっと紀柳院…都筑家のために動いていたからね。見守っていたからさ」


ずっと動いていた…。北川さんが…何が起きてるかはわからないが、北川さんは都筑家のために動いていたと知る。
見守っていたって…。


鼎のブレードはさらに光を増していた。



鳶旺の赤黒い棘と黒い稲妻は病院のシールドを破ろうとしている。

「させるかよっ!!」
晴斗は超攻撃的発動・レイジングスラッシュをさせるも鳶旺の棘は勢いが止まらない。
鐡はどこからか出した剣で黒い稲妻を受け流した。


「効かねぇんだよ、ジジイ」

鐡、かなり余裕。鳶旺は予想外の猛攻撃に半怪人態へと変貌している。
鐡はまだ人間態のまま。


晴斗は病院のシールドを破ろうとする棘と対峙。
棘は容赦なくシールドを破ろうとしてる。

「もう、逃がさないからね。都筑」
鳶旺はニタァとした声を出す。棘の攻撃力が上がった。
晴斗はレイジングスラッシュの攻撃力を上げている。体力の消耗が激しい。負けるわけにはいかない…。この中には鼎さんがいるんだから…。



病院の地下シェルターでは、鼎のブレード・鷹稜が独りでに動いていた。


「何が起きたんだ!?」
鼎は宙に浮くブレードを見た。

「鷹稜は紀柳院と共鳴した。鷹稜はあなたの能力を受け止め、解放されたんだ。直接じゃなくても戦える」

「どういうことなんだ!?」



鼎は晴斗の身を案じていた。さっきから外ではシールドを破ろうとしてるのか、激しい音が聞こえる。

私は仲間を守りたい…!