異空間での禹螢(うけい)戦から数日後。怪人は不気味なことにぱたりと出現しなくなる。

鼎はその間に一般病棟に移った。傷は深く退院までにまだかかると聞いた。
御堂も禹螢戦で怪我したため、手当てを受けたという。



鼎はある日、不思議な人と会った。その人はなんの前触れもなく鼎の前に現れ、自分のことを「鷹稜(たかかど)」と名乗った。

鼎がいる病室は隊員用の一般病棟なため、6人部屋だが1人しかいない。
時間帯は夕方。黄昏時だった。


「何者なんだ、お前」
「だから『鷹稜』ですって」


変な夢でも見ているのか?


この「鷹稜」と名乗る男、見た目からして怪しい。まるでマジシャンのような格好をしているのだ。


シルクハットとまっさらな白い仮面姿が際立つ。
仮面は鼎のようなベネチアンマスクではなく、つるっとした何もデザインされていないもの。だから顔がないように見える。

モノトーンの服装にまっさらな白い仮面の男は、黒い頭から被るタイプのマスクの上から仮面を着けているため正体が一切わからない。


鷹稜はやけに丁寧だった。

「どうやらまだ信じていないようですね、私が『鷹稜』だということを」
「お前…マジシャンみたいな姿だが『鷹稜』って…私のブレードなのか?」

「えぇ、そうです」


鼎はベッドの側を見た。鷹稜がない。その場所にはあの不思議な男がいる。

「鷹稜…なぜ仮面姿なんだ?」
「私達は主の影響を受けているのです。この仮面はあなたを反映しています」


今…私「達」と言った?
ブレードが人間になることなんて、あり得るのか?



不思議な事案は晴斗にも起きていた。本部・休憩所で晴斗は見たことのない男性を見る。


「えーと、誰!?」
「え?俺は『恒暁(こうぎょう)』だよ。晴斗、初めまして…じゃなかったわ」

「こ…恒暁!?…って、俺のブレードと同じ名前じゃないか!」
「俺、お前のブレードだよ?」


対怪人用ブレードが人間化するなんて、そんなんあり得るのか!?



この不可思議な事象はすぐさまゼノクで調査委員会が組まれた。

「本部で対怪人用ブレードが人間化する不可思議な事案が起きている。なんでそうなったのかはわからないが、戦力に影響するかもしれない」



晴斗は恒暁とあっさり打ち解けていた。


「つまり、ブレードが擬人化したって解釈でいいのか?」
「なんでかはわからないが、そうなってたの。元の姿にいつ戻れるかはわからんよ」


恒暁…それどういう意味だ!?



鼎も鷹稜と打ち解けたようだった。相棒のブレードが人間化するなんて、変な感覚。


「つまり、元の姿にいつ戻れるのかわからないのか」
「だから束の間の人間の姿を満喫したいと思いまして」

「戦う時はどうするんだ?」
「私自身が行きますよ。鼎さんは怪我でまだ動けないじゃないですか。
あの時はすいませんでした。敵の手に落ちてしまったばっかりに…。傷つけてしまいました。不甲斐ない」


鷹稜は顔は見えないが、謝ってる。

「いいんだよ。禹螢は倒したんだし、鷹稜はそう落ち込むな」
「で…ですが…」
「お前、見かけによらずいい奴なんだな。怪しんでごめん」
「私はあなたの相棒ですから」


鷹稜がなぜマジシャンのような姿なのか、なんでなのかはわからない。


「鷹稜、お前…徹底的に顔を見せないのだな。簡単には外れないだろう、その仮面。前、見えているのか?」
「見えていますよ。そもそも私は人間ではありませんから」


ブレードが人間化しただけだからな…。それにしてもなぜ?



ゼノクではブレードが人間化した隊員を調べてる。

西澤はあることに気づいた。


「暁と紀柳院だけみたいですね、対怪人用ブレードが人間化したの」
「昨日までは何もなかったのにな〜…。
暁と紀柳院のブレードに変化でもあったのか。この2人のブレードは意思があるらしいから、それも関係してるのかな?」

「長官、しばらく様子見しますか」
「見たところ、主としか干渉していないもんねぇ」



そんな不可思議な状況の本部にアラートが鳴り響く。


「怪人出たな」
「あ、おいっ!恒暁!行くなよっ!!待てって!」


恒暁は身軽なのか、ひょいひょいと現場へ。晴斗は恒暁を追う。
御堂と時任はこのヘンテコな光景を見た。

「晴斗のやつ、あいつ誰?恒暁言ってたけど」
「恒暁って、暁くんのブレードっすよ!」



都内某所。そこにはネオメギドの姿が。
恒暁はいきなり先制攻撃。かなり強い。


「晴斗、俺を使いこなしていないだろ?使いこなせてないのかなー?」
「…んなっ!?」

恒暁は何かを察知した。
「鷹稜も向かってる」
「鷹稜って鼎さんのブレードだ…」



本部隣接・組織直属病院。


鷹稜は窓を開け、身を乗り出した。

「鷹稜どこへ行くんだ!?」
「怪人が出たんですよ。恒暁が交戦中ですね。
私も向かいましょう」


鷹稜はそう言うと、律儀に窓を閉め→ハイジャンプで移動。本当にマジシャンみたいだな…鷹稜は。
あの動きは人間には不可能。ブレードだから可能なんだろうな。



鷹稜は恒暁と合流。

「鷹稜!来たか〜!」
「待たせましたね」


晴斗は鼎のブレード・鷹稜の人間の姿を見た。
マジシャンみたいな見た目に白いまっさらな仮面。異様に見えるが、出で立ちのせいで違和感がない。


鷹稜ってマジシャンみたいだ…。振る舞いが上品なのにめちゃくちゃ強い。
鼎さんのブレードだから反映されてんのかな。あの仮面、鼎さんの影響なのかな…。


鷹稜は華麗にマントを翻し、ネオメギドを翻弄。
恒暁は肉弾戦で一気に突いている。2人は人間化したことにより、実力を発揮していた。


鷹稜は晴斗にこう伝えた。

「鼎さんに伝えて下さい。あなたはまだ完全に私を使いこなせていないよと。真の実力を発揮した時、変わるでしょうと」
「鷹稜…わかった。鼎さんに伝えるから!」

「恒暁、一気に行きましょうか」
「おぉ!」


恒暁は好戦的。鷹稜は紳士的。
対照的なこの2人は連携するとかなり強くなる。

2人はそれぞれ長所を活かして怪人を撃破。



鷹稜は恒暁・晴斗と言葉を交わした。


「それでは私は主の元へ戻ります。人間から元の姿に戻るかもしれませんからね」
「鷹稜さん、伝言は伝えるから!鼎さんに」

「晴斗くん、頼みましたよ。恒暁、元の姿に戻っても私達は志は同じです」
「そうだな」


鷹稜の声が優しくなった。

鷹稜はそう2人に伝えると姿を消した。鼎がいる病院に行ったんだ。



ゼノクではブレード人間化の驚異的な実力に驚きを見せる。

「なんなんだ!?この数値は!?ブレードが人間化しただけで、こんなにも変わるもんなのか!?」
「西澤、ブレードの人間化は一時的なものだとわかったから。いずれ元の姿へ戻るだろう」





第45話(下)へ続く。