鼎と憐鶴(れんかく)がそこそこ打ち解けてから約1週間後。司令室にある段ボール箱が届く。
宇崎はそれを開封、中身を見た。
「憐鶴が制服をカスタムに出してたのか。あの黒装束にフードがプラスされてる…。包帯がなくなったからフードが必要になったのか。執行人も大変だな」
そこに憐鶴が入ってきた。
「カスタムした制服来ました?」
「あぁ、来たよ。それと憐鶴が頼んでいた『例のあれ』、出来たから。任務時顔を見られてはいけないって酷だな」
「見られたらおしまいですからねー。これも怪人殲滅の手段なんですから」
憐鶴はカスタムされた制服の上着2着を受け取った。今着ているものもカスタムに出すという。
「例のあれはどこにあるんですか?」
「研究室だよ。一緒に来るか?本部の研究室は初めてだろ」
本部・研究室。研究室内の小部屋には鼎がいた。
「小部屋に先客がいたみたいね〜」
宇崎、少しからかい気味に言う。小部屋の戸が開く。
「先客って言うな。仮面のメンテナンスをしていただけだ」
鼎はスペアの仮面を着け、手には同じ仮面と眼鏡ふきのような小さな布を持っていた。
憐鶴は鼎のあの白い仮面はメンテが必要なんだと知る。紀柳院さんの仮面、目の部分に保護用レンズがあるからメンテが必要なんだろうな…。レンズが曇ったら見えなくなる。
素朴な疑問だが、あの仮面のレンズが気になっていた。曇らないのか?…と。
鼎は小部屋に戻った。宇崎は研究室の奥に憐鶴を案内。
宇崎は奥から箱を持ってくる。黒い平べったい箱だ。
「『例のあれ』はこの中に入ってるよ。オーダー通りに黒いものにしたから」
憐鶴は箱を開ける。その中には黒い女性用のベネチアンマスクが入っていた。よく見ると左側に控えめな装飾が入っている。
「任務限定なんだからスペアは作っていないよ。鼎の仮面とは違うからね。試しに着けてみて」
憐鶴は早速着けてみる。憐鶴用の黒い仮面は目元がオープンになっている。
「その仮面にあの制服…任務時はフードを被るんだろ?」
「そうですが」
憐鶴は仮面を外した。少しすると鼎が小部屋から出てきた。メンテを終えたらしい。
「憐鶴、なんだか嬉しそうだな」
「紀柳院さん、メンテ終わったんですか?」
「たまにしないと曇って視界不良になってしまうんだよ。私からしたら仮面は身体の一部、必需品だ。
憐鶴のその箱…なんだ?」
「任務用の仮面ですよ。見ますか?」
鼎は箱の中を見た。黒いベネチアンマスクだ…。制服に合わせたのか。
包帯いらなくなった代わりに仮面で顔を隠すんだ。
2人はこの約1週間の間にさらに打ち解けるような感じに。
「…で、九十九(つくも)の封印はまだ解かないのか?」
「解きますよ。屋内だと危険なので屋外になりますが」
屋外!?
「封印解除は数年ぶりなので衝撃波、凄いと思いますからね…」
衝撃波!?
本部・グラウンド。憐鶴の対怪人用鉈・九十九の封印解除を見に来た隊員もちらほらいる。
いちかはまるでイベント感覚。
「うきゃー楽しみ〜」
「いちか、イベントじゃないんだよこれは」
彩音が諭す。憐鶴はグラウンドの中央に九十九を突き刺した。
憐鶴は優しく九十九に話しかけた。
「九十九、封印解除します。…力になって下さい」
すると鉈の刀身が眩く光った。
雷のような音と共に激しく光る九十九。辺りは轟音に衝撃波に包まれた。
3分ほど轟音に包まれた後。九十九の光はなくなり、何事もなくなった。
憐鶴は九十九を抜く。
「封印解除しました。これで九十九は人間化出来ます」
あの雷と轟音は九十九の属性なんだろうか…?
異空間では絶鬼が人間界に揺さぶりをかける。
「さて、どう出るかな…?人間ども」
絶鬼はさらなる威力を発揮しようとする。九十九の封印が解けてから僅か数分後に地震発生。
震度は以前よりも大きい。震源不明の地震は絶鬼の脅威を示していた。