採石場では蔦沼vs絶鬼の戦いがまだ続いてる。絶鬼は炎や氷を駆使してかなりの勢いで攻め立てる。
蔦沼はというと、戦闘兼用義手を展開し雷撃や火炎放射などを繰り広げている。


「疲れてきたか?長官」

絶鬼はまだ余裕があるのかニヤニヤしてる。
絶鬼の見た目年齢は20代前半くらい。蔦沼は50代前半といったところ。長丁場になろうものなら、蔦沼は不利になる。絶鬼は見た目以上に長く生きているらしいが。


「あんたの義手、使えなくしてやろうか!」
絶鬼は突如、一気に距離を詰めるとものすごい力で右腕を折ろうとする。

「義手だから痛みを感じないのか…。ならば」
絶鬼は右腕を掴んだまま、炎を発した。かなり熱い。


「うわあああああ!!」
「これくらいにしてやんよ。あんたの右腕、使えなくしてやった。火傷しなくてすんだな」

蔦沼の義手は両腕。使えるのは左腕だけになってしまう。右腕は絶鬼の炎の影響を受けてしまい、ほとんど使い物にならない。


義手の特殊な金属が仇となったか…。熱伝導がかなり効いてる…。生身の方も右腕はダメージ受けてるな…。


蔦沼は絶鬼の猛攻により、一気に劣勢になる。



本部では北川元司令と晴斗の父親・陽一を呼んだ。晴斗も来ている。


「宇崎が俺を呼ぶなんて珍しい」
陽一は少し戸惑い気味だが、手には対怪人用ブレード・燕暁(えんぎょう)を持ってきていた。

「陽一・北川、悪いけど援護に行ってくれないか。このままだと長官が危ない」


「わかったよ。燕暁、出番だ」
「父さんが呼ばれるってよほどだよね…。室長、俺は?」

「晴斗は待機だ」


待機!?


司令室の前方に佇んでいた鼎に異変が起きる。突然、ふらついたのだ。
鼎は思わず机に手をついた。


「大丈夫か!?」
宇崎は心配そう。鼎は息切れしていた。

「発作が出た…みたいだ…。軽いものだから大丈夫」

鼎はちらっと宇崎の方向を見る。彼女は白いベネチアンマスク姿だが、明らかに辛そう。
御堂は鼎の側に寄り添った。


「鼎、無理すんな。救護所行こう」
「…あぁ」

御堂は鼎の身体を気遣いながら司令室を出た。晴斗達も心配そうだ。
鼎さんしばらく発作出なかったよね…。よりによってこのタイミングでなんて。



本部・救護所。御堂は鼎を寝かせた。


「本当に大丈夫なのか?休めって。しばらく発作出なかったのに…」
鼎の扱いに長けている彼は、彼女を楽な姿勢にさせた。

「上着は脱いだ方がいいんじゃないのか。寝にくいだろ」
御堂は鼎の制服の上着を脱がせた。インナーは黒いTシャツなので問題ない。
代わりに救護所にある、肌触りのいい上着を着せてあげた。


「和希…悪いな」
「お前は謝らなくていいから。とにかく休んでろって」

鼎は御堂を見た。御堂も鼎を見る。
「しばらく側にいるから、安心しな」
「…ありがとう」



採石場に北川と陽一が到着。ここでゼルフェノア黎明期メンバーの力を現役隊員達は目の当たりにすることになる。


「長官!来ましたよ」
「北川と陽一か。かなりマズイ状況だ…」

蔦沼は明らかに消耗している。右腕は絶鬼にやられて使い物にならないのか。


陽一は対怪人用ブレード・燕暁を抜刀、北川は中型の対怪人用銃を2丁同時に発砲。


「燕暁、力を貸してくれ。君の力が必要なんだ」

陽一はブレードに優しく声を掛けた。すると燕暁の刀身が発光。発動する。
晴斗の恒暁(こうぎょう)と似たような発動パターンであることから、似たような性質の武器だとわかる。


北川は比較的大型装備を使うのが意外だった。
「北川のやつ…あんな装備どこから持ってきたんだ…」

宇崎もわからない。

隊員の桐谷が大型装備を使うようになったのは、北川の影響らしいが桐谷は黎明期にいない。



陽一は対等に絶鬼と戦っていた。司令室では晴斗が思わず叫ぶ。
「父さん!!」

北川はさりげなく蔦沼を避難させた。黎明期メンバーは動きに一切無駄がない。


司令室では2人の洗練された戦いに見とれてしまっている。

父さんすごいや…。



救護所では鼎が落ち着いたのか、ベッドから起きる。


「まだ寝てろって。落ち着いたのか?」
「だいぶ落ち着いたよ」

御堂は救護所に2人っきりという、タイミングを逃したくなかったらしい。御堂はおずおずと話しかけた。


「か…鼎…」
「なんだ?」
鼎はいつも通りそっけない。

御堂はさりげなく鼎の手を優しく握る。御堂は鼎にこんなことを言った。かなり緊張気味に。


「仮面…外すかずらしてくれないか?お前の素顔…しばらく見てないから」

鼎は手慣れた様子で仮面を外した。御堂はどぎまぎしている。


久しぶりに見た鼎の素顔。角度の関係で顔はほとんど見えてない。大火傷の跡が痛々しい。御堂は鼎にさらに接近する。
そっと彼女を抱き寄せた。彼女も緊張しているようだ。


「な…なんだ…和希。いつもと違うぞ…」
御堂はかなりさりげなくキスをした。ほんの数瞬のことだった。

鼎は御堂の不意討ちに驚く。
「驚かせて…ごめん…」
「べ…別にいいんだ…。和希と最近時間作れてなかったから…」


鼎はどぎまぎしながら仮面を再び着ける。2人にとっては初めてのキスだった。


心配して救護所に向かっている彩音・いちか・憐鶴(れんかく)の3人。
彩音はドアをノックした。


「鼎、大丈夫?」

御堂が答える。
「鼎は回復したよ。一応様子見するけどな」

あれ…なんか御堂さんの声が緊張気味。何かしらあったのか?
彩音はドアを開けた。そこには顔がほんのり赤い御堂の姿が。

いちかは察した。2人はずっと手を繋いでいる。


御堂はぶっきらぼうに言った。

「長官はどうなってる」
「援護に北川さんと陽一さんを出したからひとまずは大丈夫だよ。長官はかなりヤバイみたい」

「きりゅさん安心しきってるね」
「鼎は寝てるからそっとしてやってくれ」


3人は救護所を出た。

「きりゅさんとたいちょー何かあったのかな。なんだか優しい雰囲気だった」
「いちか、詮索しないの!」



採石場ではいよいよ正念場を迎えていた。
絶鬼との戦い、どうなる!?

北川と陽一だけでは絶鬼を倒せそうにない…。