本部・司令室――

「父さんと北川さんでもヤバイんじゃないの!?さっきからまた揺れてるよ…なんか揺れが大きくなってる!?」

晴斗は不安を露にする。メインモニターには絶鬼相手に苦戦する陽一と北川の姿が映し出されている。
「揺れてる」というのは絶鬼が引き起こした地震のこと。
揺れは収まった。


「また震源不明か…」

宇崎は地震情報をスマホで見てる。モニターを見た限りでは絶鬼がいる場所は揺れてない。


憐鶴(れんかく)がこんなことを言った。

「明らかに2人だけでは不利すぎます。私が助太刀しましょうか」
「憐鶴…お前の鉈、意思があるんだろ。晴斗や鼎のブレードみたいに」
宇崎は冷静。

「九十九(つくも)のことですか?意思はありますね。封印解除したので人間化も可能です」
「陽一の燕暁(えんぎょう)も人間化可能なんだ。つまり…この組織には人間化出来る対怪人装備が4つある」


晴斗の恒暁(こうぎょう)・鼎の鷹稜(たかかど)・憐鶴の九十九・陽一の燕暁。



採石場。北川&陽一は劣勢を強いられている。なんとか燕暁のおかげで絶鬼にダメージを与えてはいるが…決定的に足りてない。

こいつの炎と氷、極端すぎるし厄介だ…!


北川はさらに強力な銃火器を放つ。激しい音が響き渡る。
陽一は絶鬼の炎と氷に屈せずに立ち向かう。蔦沼はなんとか安全な場所に離れたが、いつ襲撃されてもおかしくない状況。


「宇崎!俺達2人じゃ戦力が足りない!なんとかならないのか!?」
「今…考えてる…」
「相手は炎と氷の使い手だ!炎は火力が強い!氷も威力が強い!」


そこに御堂が帰ってきた。
晴斗は話しかける。

「御堂さん、鼎さんは?」
「あいつは眠ってる。でもまた勝手に起きそうでこえぇんだよ…。
これ、鼎から預かってきた」

御堂は鷹稜を見せる。


「鼎からの伝言だ。『鷹稜を使って欲しい』と。晴斗なら使えるだろ」
「御堂さんだって使えるじゃん」

「…私は先に行きます」


憐鶴の予想外の行動に一同不意討ちを喰らう。
「憐鶴!?ちょっと待て!待てってば!!」

宇崎の制止をよそに憐鶴は九十九を手に司令室を出た。九十九以外にも装備はあるのだが。


「しつちょー、憐鶴さん行かせていいの?」
いちかが聞いてきた。

「あいつは本部の管轄じゃないからな。俺が止めたって言うこと聞かないだろうよ。我が強いみたいだし」



憐鶴は救護所へ寄ることにした。鼎は起きていたらしい。


「憐鶴…どうしたんだ?」
「紀柳院さん、私…行きます」
「行くって…絶鬼のところへか!?」
鼎が取り乱した。

「紀柳院さんはゆっくり休んでいて下さい。私は私がやれることをするだけです」
「お前…そういえば本部の人間じゃあなかったな…。私は止めないよ」
「御堂さんはまたここに来るかもしれないので、私は行きます」


「生きて帰ってこいよ」


憐鶴は救護所を出ると苗代と赤羽に連絡した。

「憐鶴さん、急すぎだって!?」
苗代が騒ぐ。
「でも既に待機してるんでしょう?」


バレてる。しれっと待機してるのを見抜かれた。

「急ぎましょうか」
憐鶴は黒い仮面を着け、フードを被った。彼女は臨戦モードになっている。
3人を乗せたワンボックスカーは急いで現場へと向かう。



救護所。やがて御堂が戻ってきた。


「これでいいのか?晴斗に鷹稜渡したぞ」
「和希には側にいて欲しいんだ…。わがままなのはわかってる」

「わかったよ。お前が甘えるなんて珍しいよな」
御堂は鼎が本当は戦いたいことをわかっていた。戦えない身体になった以上、彼女には無理をさせることは出来ない。


「憐鶴が来たんだ」
「あいつ…来たのか」


「戦えないって…辛い…。見ているだけだなんて」
鼎はずっと思っていたことを吐露。御堂は鼎をよしよしする。

「お前にとっては酷だよなー。大丈夫だから心配すんな。うちの組織をナメんな」
「和希らしいことを言う」



やがて憐鶴は現場に到着。苗代と赤羽は援護。
北川と陽一は黒衣の仮面の人物を見た。味方?

「助太刀に来ました。本来はこんなところには来ないのですが、緊急なので」


北川はすぐにわかった。

あの黒い制服…ゼノクの「特殊請負人」!?通称・闇の執行人だ。
執行人って女だったの!?あの男性2人は協力者だろうな。同じ黒衣なあたり、ゼノクの人間だ。


「苗代・赤羽、バックアップ頼みます!」
「了解!」

憐鶴達は戦闘力が高い。協力者の苗代と赤羽も戦うと強い部類の隊員。
特殊請負人界隈の人間は戦闘力が高い人間が多い。


絶鬼は憐鶴に気づく。あの黒い仮面の女…何者だ!?

憐鶴は九十九を出すと、いきなり発動させた。
絶鬼は憐鶴の気迫に圧される。九十九は発動するとかなりの攻撃力を誇る。

バックアップの苗代と赤羽も炎と氷に立ち向かう。


「なんつー火力だ!!」
「赤羽、バリア張れ!!」
「はいよっ!!」

特殊請負人の車両にはバリア発生装置が付いている。赤羽はそれを起動。バリアが張られる。
バリアは北川と陽一をも包んだ。


なんて強力なバリアだ…。心強い。


「助かるよ!」
「私は出来ることをしただけです。九十九、攻撃力をさらに高めるのです!!」

九十九の発動の威力が上がった。北川は圧倒される。陽一の燕暁に変化が。燕暁は九十九に触発され、発動の威力が上がる。



救護所では鼎の肩に御堂が制服の上着をかけていた。


「立てそうか?」
「…あぁ」
「司令室…行けるか。無理そうなら一緒にここにいるよ」

「悪い。まだ頭がぼーっとする…」
「鼎、お前もう少し寝ていた方がいいんじゃないのか…。身体に障るだろうに」

「そうだね。無理は禁物だな」
鼎は再び横になることにした。どうも体調が優れない。あの発作のせいか?



憐鶴と陽一はいつの間にか連携していた。

「どこの誰だかわからないが、助かるよ!」
「私は『特殊請負人』をしているだけの者ですよ。ゼノクの人間です。
…『執行人』と言った方がわかるかと」


執行人!?あのゼルフェノアが取りこぼした怪人を殲滅する人間のことか!?
なんでその裏の人間が表に!?


「話は後です。絶鬼を殲滅するのが先」


この状況下で淡々としているわりにはかなり攻撃的だ…。
陽一は黒衣の執行人を前にして、戦々恐々していた。彼女の戦闘には躊躇いがない。