晴斗は対怪人用ブレードの変化に気づく。自分のブレード・恒暁(こうぎょう)と鼎が預けたブレード・鷹稜(たかかど)が淡く光り始めたのだ。

ブレード同士が呼応してる…。


司令室のメインモニターでも陽一の対怪人用ブレード・燕暁(えんぎょう)と憐鶴(れんかく)の対怪人用鉈・九十九(つくも)が呼応しているのがわかる。
4つの対怪人用装備はそれぞれ呼応しあっている。


「室長、俺も行った方がいいのかなぁ。ブレードがすごい反応してるんだよ」

晴斗は迷いながら呟いた。

宇崎は2つのブレードを見た。淡く光っている。鷹稜は抜刀していないのにブレード全体が反応している感じだ。


「4つの対怪人用装備が反応してるな…。晴斗、その状態でブレード2つ使いこなせるか?」
「呼応状態は初めてかも」



採石場。憐鶴は発動状態の九十九で絶鬼に畳み掛ける。陽一は思わず気を取られた。


なんてやつだ執行人。あの狭い視界でずっと戦い続けてる。
仮面とフードって死角だらけだっていうのに、それをものともしない。彼女の装備は鉈にもかかわらずリーチの短さを気にしてない。

…発動状態だからリーチが長いのか!?


絶鬼は憐鶴の激しい猛攻にダメージを受ける。

「ぐわぁっ!!」


なんなんだこの女…。強い執念を感じる。

「まだまだ行きます!!」
憐鶴はさらに叩きつける。陽一と北川もうかうかしてられないと応戦。憐鶴のバックアップについている苗代と赤羽も本気モード。


「君たちもっと援護出来ない!?」
北川は苗代と赤羽に言った。2人はそれぞれ得意のメイン装備を出し、援護。


「なんかよくわからないけど頼られてるぞ、俺達」
「なかなかないチャンスだな。憐鶴さんの協力者やってて良かったよ」

憐鶴の協力者2人はなかなかないチャンスをものにする。2人は滅多にない見せ場に気合いが入る。



本部・救護所。鼎はベッドから起きていた。御堂は思わず鼎の手を握る。火傷の跡を隠すための黒手袋が痛々しい。

「本当に大丈夫か?」
「あぁ、だいぶ調子は良くなったよ。和希…どうした?なんでそんな顔をしてるんだ?」

鼎は御堂の複雑そうな表情を見た。



御堂はこの絶鬼戦より約1ヶ月前、ゼノク医療チームの天才外科医・加賀屋敷からある話を聞いていた。

それは鼎の身体に関すること。


「今後も彼女の発作は起きるかもしれません。命には別状ないですが。
紀柳院さんと付き合っているとなると…荊の道になるかと思います。御堂さんは彼女の先輩とは聞いてます。…覚悟はありますか」
「とうにあるよ。あいつとはなんだかんだ一緒だからな」

「それを聞いて安心しました。我々も彼女のサポートは今後もしますから。御堂さんの心のうちを知りたかったんですよ」
「俺は愛を試されたのか…?」

御堂、めちゃくちゃ困惑。


「御堂さんは献身的に紀柳院さんの介抱したとかよく聞いてますので、気になってはいたんですよ」
「それは彩音の方が多いぞ」

「駒澤さんは紀柳院さんの親友ですからまぁ」


「異性」でって意味かい!



鼎と御堂は司令室へゆっくりと向かう。

「戦況はどうなってる?」
鼎は冷静に聞いた。
「憐鶴の猛攻がすごいらしい」
「あいつ…絶鬼を倒したいから本望なんだろう。私みたいに無茶しなければいいのだが」



本部・司令室。

晴斗は2つのブレードを持った状態であたふたしていた。


「みみみ…御堂さん!鷹稜ちょっと持ってくれる?」
「なんだよいきなり。…すごい反応してんな」


鼎は呟いた。

「4つの対怪人用装備が反応してるのか…。行けということかもしれない」
「ちょっと待て鼎。晴斗はわかるが俺もかよ」

「私は物理的に戦えないんだよ。…わかっているだろ…。戦えばどうなるかくらい、和希はいや…この部屋にいる全員は知っているはずだ」


司令室にいる隊員達は馴染みのメンバーばかり。

鼎が物理的に戦えば…死が待ち受けている。身体がぼろぼろだからだ。
日常生活レベルにまではゼノク医療チームの力によって回復したものの、激しい運動はドクターストップされている。それくらいに危険。


御堂は鼎の手を見た。握りこぶしが震えている。本当は戦いたいのに、戦えないもどかしさ。

御堂は鼎の思いを受け止めた。
「晴斗、行くぞ!」
「えぇ!?」
「対怪人装備4つないとどうやら絶鬼は殲滅出来ないみてーだ。室長、至急ヘリ頼むわ」

「和希、お前なぁ…。よし、晴斗・和希。合流してきな。憐鶴はかなり消耗しているから時間勝負だからな。…そして全員生きて帰ってこい!」
「わーってるよ」

御堂はぶっきらぼうに答えた。鼎も2人に優しく言った。


「和希…死ぬなよ。晴斗もな」
「鼎、ぜってぇ帰ってくる。お前をぼっちにはさせないから」


御堂と晴斗、2つのブレードを携えて採石場にいよいよ合流する。
採石場では憐鶴の鉈と陽一のブレードに変化が。


反応がますます強くなってる…。


憐鶴はかなり消耗していた。息が上がっている。

「おい!大丈夫か!?」
「まだ…戦えます…」


北川は指示を出した。
「陽一、彼女を一旦退かせろ!!援軍がすぐそこまで来てる!!」
「援軍!?」
「御堂とお前の息子だよ」

「晴斗!?」


苗代と赤羽はなんとか憐鶴を一旦撤退させる。

「憐鶴さん、無茶したらダメだって!!死んだら本末転倒だよ!!」
「…わかっててやったから…」


憐鶴と入れ替わるようにして晴斗と御堂が参戦。絶鬼には予想外だったらしい。

北川は今の状況を見た。

新旧隊長(御堂と陽一)とその陽一の息子・晴斗、知っているのはこの3人。
執行人は「憐鶴」と呼ばれていたな…。執行人には協力者2人。苗代と赤羽というのか。