採石場では依然として絶鬼との戦闘が続いている。
御堂・晴斗・憐鶴(れんかく)・陽一・北川と憐鶴の協力者の苗代と赤羽の7人は激しい攻防を繰り返してる。

長官の蔦沼は苗代が運転する、憐鶴が乗る特殊請負人用の黒いワンボックスカー内に避難誘導されていた。


車内では立て直しを図る憐鶴がいた。蔦沼は思わず声を掛ける。


「憐鶴、立て直せるか!?」

憐鶴は水分補給している。
「今やっているじゃないですか」


車は幾分離れたところにある。憐鶴は立て直し、激戦地へと向かう。通信が聞こえた。

「御堂さん、同時に行ける!?」
晴斗の必死な声がした。
「行けるけど、2人じゃ足りないだろうが!お前の親父さんと憐鶴の力が必要だ!!」
「やっぱり4つの対怪人装備を同時に使わないとならないのかな」


4つの対怪人装備…。

私の九十九(つくも)・暁親子の恒暁(こうぎょう)と燕暁(えんぎょう)・紀柳院さんの鷹稜(たかかど)のことだ。人間化することが出来る対怪人装備はこの4つしかない。


憐鶴はダッシュした。

「すいません、また戦います!」
御堂は憐鶴に指示。
「憐鶴!お前は陽一のところへ行け!ブレード持った人がもう1人いるだろ?そいつが晴斗の親父さんだ!!燕暁の発動は不完全だ!!憐鶴、お前が発動を触発させろ!!」
「了解」

憐鶴は陽一の元へ。彼女が陽一のブレードを見ると燕暁の発動は不安定だった。
「どうやら4つ同時に使わないとダメなようです。九十九、燕暁に力を分けてあげて」
憐鶴は鉈を陽一のブレードに刀身を合わせた。すると九十九に触発されたのか、燕暁の光が増す。


「こんなことあり得るのか!?」
陽一は驚く。北川から指示が来た。

「4つの対怪人装備が全て発動出来たな。4人一斉に絶鬼に攻撃しろ!!」
4人はそれぞれほぼ同時に絶鬼に攻撃を仕掛ける。援護の苗代と赤羽も驚くほどの威力を発揮している。辺りは衝撃波と轟音が響いている。

絶鬼は4人の猛攻に圧されていた。



本部・司令室。鼎達はメインモニターを観ている。いちかはそわそわしていた。


「なんかすごいことになってるよ…。きりゅさん、座った方がいいって。まだ本調子じゃないんでしょ?」
「あぁ、まだ本調子じゃない…。この戦いを見届けなければならないんだ…!」

鼎は断固、座ろうとしない。宇崎は優しく促した。

「また倒れそうになったらどうすんの。座った方がいいよ。和希達はお前らの思いを受け止めて戦ってるから」
「そうだな…」

鼎はようやく座る。


彼女には伝えてないが、宇崎は密かにゼノク医療チームを本部隣接の組織直属病院に呼んでいた。最近の鼎の様子から察するに、彼らに診てもらう必要があると判断したから。


「きりゅさん!たいちょーがやられてるよ!!」
「いちいち騒ぐな…!和希はなんだかんだやり遂げる男だ、諦めるわけがない」


鼎は若干調子悪そうだが、いちかに反発した。
いちかは鼎を見る。顔は白いベネチアンマスクで隠れているが、なんだか辛そうに見える。


宇崎は迷った。加賀屋敷を呼ぶべきか…?



採石場では4人がそれぞれ対怪人装備の特性を活かし、入れ替わり立ち替わり攻撃。
御堂はいきなり叫んだ。

「装備を人間化させるぞ!!」
「御堂さん、鷹稜人間化出来たっけ!?」
晴斗は御堂を見た。本来なら鼎にしか出来ない鷹稜人間化。鷹稜の本来の使い手は鼎だからだ。

「そんなんやったことねーよ」
御堂さん、当てずっぽうで言いやがった〜!


御堂は鷹稜に声を掛ける。
「鷹稜起きろ!お前が人間化しないと倒せねーんだよっ!!鼎も願ってる。頼むから!」

他の3人の対怪人装備は人間化したが、鷹稜だけブレードのまま。
人間化した燕暁が近づく。

「鷹稜、起きて下さい。今は主がどうとか関係ありません。世界滅亡の危機なんですよ」
九十九と恒暁も声を掛ける。

「いつまで寝てんだ、起きろ」
「今ここで協力しないといけないのにな。垣根を超えて」


九十九の言葉に鷹稜が反応。鷹稜はようやく人間化する。御堂は呆れ気味に呟いた。
「やっと起きたか。この過保護野郎」
「悪態つかないで下さいよー」


対怪人装備が人間化したことで戦力は倍に。人間化した装備には属性があるらしく、九十九は雷を操り・鷹稜は幻術を使う。恒暁と燕暁は光。


装備の使い手は銃火器などサブ武器を使ってる。御堂は鷹稜に命令。
「大規模な幻術使えるか!?」
「イリュージョンならお任せを」

鷹稜は採石場をステージに見立てて、大規模な幻術で絶鬼を翻弄。九十九は雷を使い、一気に攻撃。
恒暁&燕暁は浄化の光を使う。そこに御堂と憐鶴が銃で畳み掛け、陽一は弓矢で攻撃。


絶鬼は人間化したブレードと鉈の凄まじい反撃に遭い、ついに膝をつく。
「なんなんだよ、お前らは!」

「負け惜しみか?絶鬼。負けを認めたらどうなんだよ」
御堂が銃口を突きつけ、呟いた。


人間化した対怪人装備に圧倒的に敗北する絶鬼。御堂はまだ負けを認めようとしない絶鬼にとどめを刺した。

銃声が鳴った。


「面倒な敵だったな。帰るぞ」
御堂はいつものぶっきらぼうな言い方に戻った。人間化した装備達も元に戻る。


御堂は鷹稜に優しく話し掛けた。

「鼎のところへ戻れるぞ」


憐鶴は車内にいた蔦沼に話し掛けた。

「とりあえず本部に行きましょう。右腕の義手の損傷が激しいですが…」
「右腕は使い物にならないから修理か義手ごと交換かな」

蔦沼はダメージを受けてない左腕の義手を眺めてる。



本部では絶鬼を倒した一報を聞いて喜んだ。

「たいちょーカッコいい…」
「いちか、だからやり遂げる男だと言っただろ。あいつはそういう奴だ」

鼎の話し方は相変わらず冷淡だが、どこか優しい。



絶鬼を撃破したことで、震源不明の地震はぱたりと消えた。



やがて本部に御堂達が帰ってくる。


「和希!心配したぞ…」
鼎は思わず御堂に駆け寄る。御堂は鼎をそっと抱きしめた。

「心配かけて悪かった」
「悪くないだろ…。これで本当に全部終わったんだよな」

御堂は鼎の頭を優しく撫でる。彼女の顔は仮面で見えないが、どこか嬉しそう。


宇崎はこんなことを呟いた。

「ひとまず終わったけど、組織はこのままだ。ま、今は宴をしてもいいんじゃないか?」


いちかは御堂にちょっかいかけてきた。

「たいちょー、前より大胆になってるよ〜。きりゅさんと人前で抱きしめるなんて今までなかったのに」
「いちか!余計なこと言うな!こっちは嬉しいんだよ!」

「あら、ごめんなさいね〜」
いちかはからかいながら楽しんでる。


暁親子が2人揃って本部に来るのは初めて。


「父さん、本部久しぶりなんじゃないの?」
「久しぶりだよ。だけどね、北川と宇崎がいるからなんだかブランク感じないなぁ」

陽一は呑気。


憐鶴達も姿を見せる。

「お。執行人一同帰ってきたか」
「司令、その呼び方やめて下さい」

憐鶴は任務を終えたのでフードと仮面を外してる。

「お前らはどうすんの?すぐに戻るのか?」
宇崎はフランクに話し掛ける。
「まだ戻れないですよ。後始末がありますから」


後始末?


憐鶴は淡々と続けた。

「裏の人間には裏の人間なりの事情があるんです。ゼノクに戻るのはその後になりますよ」


一時的に表の人間になっていたじゃんか、お前…。



絶鬼戦は予想外の方向に進み、幕を閉じた。これでようやく全て終わったことになる。





第10話・最終回へ続く。