元老院の外では鐡vs鳶旺(えんおう)の戦いが始まっいた。人間態限定という条件付きで。
鐡は部下を取り戻すために鳶旺を翻弄する。
「その程度かよ!ジジイ。怪人態にはなるなよ?今回は手加減しての勝負だっつってるだろ?」
鐡はかなり煽っている。人間態限定だが体の一部は変化可能。
鐡は右腕を剣に変え、鳶旺と小競り合いをしている。
「元老院がなんで『仮面の掟』を作ったのか、俺が暴いてもいいんだよ?」
「それだけはやめろ」
「やっぱり怪しいですな。様子見してねーでかかって来やがれ」
だが鳶旺は慎重に攻撃するだけで、鐡的にはつまらないようだ。
鐡は腕を元に戻した。そして鳶旺の仮面にガバッと触れる。
「てめーの素顔を周りに見られたくなかったら、部下を返せ。いいな?」
完全に鐡は脅しているが、鳶旺はその圧力に屈してしまう。元老院の仮面の掟、人前では素顔を見せない…これが破られるとどうなるか…。
鳶旺は圧力に負けた。鐡のやり方は荒いが、ただの愉快犯ではない。
こうして鐡の元に2人の幹部が戻った。だがこれで元老院と鐡の関係は悪化する。
休日、どこかへ出かけていた烏丸はやがてゼノクへと帰ってきたが、どこで着替えたのかゼノクスーツの上に服を着ていた。
いつの間に着替えたの…?
烏丸は戻ってくるなり、同僚の式見(しきみ)に声を掛けた。式見はこんな反応。
「烏丸…やっぱりダメだったか…。スーツないと無理かぁ」
「何回も試してるけど、逆に変な感じがして…」
「それで途中で着替えたのか…って、よくそんな場所あったなぁ!?」
「今日行った場所は元ゼノク入居者が多い区域だったので…着替える場所には困りませんでしたよ」
行った場所も場所だが…。烏丸、人多い場所苦手だからどうしてもな〜。
「無理して依存性を克服するなとは言わないから、少しずつ改善して行こう。烏丸みたいなスーツ依存、他の職員もいるから大丈夫だって」
「大丈夫…かなぁ」
2日後。晴斗は研究施設に呼び出された。そこには蔦沼と西澤が。
「暁。ブレード、持ってきた?」
蔦沼、めちゃめちゃ軽い言い方。
「は、はい」
晴斗、初めて長官を前にして緊張。蔦沼はブレードを受け取る。
「そんなに緊張しなくてもいいよ。僕、カリカリするようなタイプじゃないし」
なんかあっけらかんとした人だなー。この人が蔦沼長官?長官のイメージと全っ然違う。
噂通り、両腕は義手だ。黒いスタイリッシュな義手。あれ…戦闘兼用だって聞いたけど。
「暁、ちょっとばっかしこのブレード借りるね。調査したいんだ。なんであの時、イレギュラーな発動が起きたのか。ただの偶然なのか、必然なのか」
「は、はい…。わかりました」
「おそらく敵はしばらく来ないだろうね。あっちもあっちでゴタゴタしているっぽいし」
「ある程度わかるんですか!?」
晴斗、びっくりしてる。
「だって最近襲撃したやつ、幹部クラス・元老院副官・なぜか鐡だったでしょ?おかしいとは思わないか?敵勢力が勝手に内部崩壊すればこっちは楽になるのだが」
ゼノク・東館。
鼎はいつの間にか七美とも話をするように。
「お前が例の『ゼノクのインフルエンサー』か」
「あれ、もしかして紀柳院鼎さんですか!?ゼルフェノアの仮面の隊員」
七美の顔は見えないが、テンション高い。
「お前…ポテンシャルものすごく高いよな…。ゼノクスーツの可能性、試しすぎだろ。昨日の配信、見たぞ」
「見たんですか!?」
七美はオーバーアクション。ゼノクスーツは顔が見えないのもあるため、七美はとにかく大袈裟に反応する。
鼎は淡々と続けた。
「よくそのゼノクスーツ姿でお菓子作りをしたよな…。まさか料理も…」
「料理は不定期に更新してますよ」
視界とか手元とか大丈夫なのか…?動画を見た限り、手元はスーツが濡れないようにゴム手袋を履いていたが。
「ゼノクスーツでスポーツする人って、いるのか…。過去にお前は挑戦していたみたいだが」
「屋内ならこのスーツ姿でもなんとか出来ますよ〜。野外スポーツはまだ未知の領域ですね。
紀柳院さん、知らないんですか?ゼノクスーツ着用者でもいますよ〜。最近高校生選手がメディアに出ていたような。陸上だったかな…」
「ゼノクスーツの可能性、ありすぎだろ…」
なんだこの会話!?七美のペースに嵌められてる。
相手は顔がまるっきり見えないのに…。あちらからしたら、仮面の女相手だからイーブンか。
「紀柳院さん、不思議ですよね。仮面って表情ないと思っていたのに…あるんですね。流葵(るき)さん見ていてそう思いました」
「流葵とも仲が良いのか?」
「私達は仲間みたいなもんですしー。ゼノクの治療って長期戦だから、自然と仲間になれるというか…」
「確かにゼノクは若い人ばかりだもんな…。怪人に若者ばかり狙われるのだろうか…」
「西澤室長から聞いたんですが、後遺症が残りやすいのが若者が多いってだけみたいなんです。年寄りは容赦なく怪人に手をかけられてるとか」
抵抗出来ないからか…。
ゼノク・研究施設。
蔦沼と西澤は晴斗のブレードを調査中。本部よりも設備が大きいために細かく分析可能。
「これは時間かかりそうだね〜」
「長官、分析は私がしますから長官は予定をこなして下さいよ〜」
「…っていうけどさ、だいたいリモートで済むから問題なかったわ」
それでいいのか!?それでいいのか長官!?ラフすぎない!?
つーか、軽いなっ!
それから長官の言う通り、敵はしばらく出てこなかった。
その間に鼎達はトレーニングルームや道場を使い、鍛練をすることとなる。