「仮面の司令補佐」紀柳院鼎と「闇の執行人」泉憐鶴(れんかく)、表と裏の人間がついに顔合わせとなったわけだが…。


憐鶴は別の部屋で話そうと違う部屋を誘導した。憐鶴の部屋はかなり広い。


「これ、すっごい機器が並んでいるっすね…」
いちかは部屋の一角にあるPCなどの機器が気になった。憐鶴は答える。

「任務用の機器ですよ。外に出ない時はこの部屋にいることが多いです」
「憐鶴、なぜ私を呼んだんだ?」

鼎は気になった様子。


「こんなことを言っても応じるかはわかりませんが…。絶鬼の猛威が横行してるのはご存知ですよね…」
「あの鬼の元締めが『絶鬼』というのか?」

鼎は知らない情報を知り、僅かに動揺。


「絶鬼は人々を拉致し、異空間に転送していることが判明しました」
「異空間…」
「『時空の切れ目』に飛ばしていると思われます」

「お前が調べたのか?」
「私とゼノクの調査で…。絶鬼は転送した人々を使い、災いを起こそうとしている」


いちかは空気を読まずにどぎまぎしながら聞いてきた。

「れ…れれ、憐鶴さん。あ…あの、話ぶった切っちゃいますが…先に謝りたいんです」
「…なんでしょうか…」

いちかはかなり緊張しているのと、憐鶴に対してどこか怯えている。鼎はいちかの手を優しく握った。
「いちか、私がついている。怯えるな」
「きりゅさん…」


鼎から勇気を貰ったいちかはなんとか切り出す。


「あ…あの…数ヶ月前、私は何も知らずに憐鶴さんの素顔の一部を見て思わず叫んでしまったんです。
それからずっともやもやしてて…事情を知ってから謝りたくて…すいません」


「いいんですよ。私はよく化け物だとかなんだとかひどく言われます。この汚れ仕事をしているせいもあるのでしょう」

意外とあっさり許してくれた。いちかは思わず聞く。

「なんで『特殊請負人』をやるようになったの?
憐鶴さんがゼルフェノアに在籍したの知ったの、最近で…」
「特殊請負人は依頼人で成り立っています。今は鬼狩りをしてるので請負人は休業してますが。
ゼルフェノアが取りこぼした怪人を殲滅するのが『特殊請負人』です」


鼎は微妙な感じになる。

ゼルフェノアが取りこぼした怪人を殲滅するのが「特殊請負人」だと…!?


鼎が聞く。
「なぜそんな汚れ仕事を引き受けた」
「憎いんですよ…。怪人が。人間態で悪事を働く怪人が憎くて憎くて引き受けました。絶鬼の殲滅はかなり難しいと思うので、紀柳院さんを呼んだのです」


「私は戦えない身体になっていること…お前は知らないのか?」
「知ってますよ。あの激戦の末に戦闘不能になったと…。あなたも無理してるじゃないですか。本当は戦いたいのでしょう?」


憐鶴は見抜いている…。
司令補佐になって以降、私の中に燻っているものを見抜いた人間は憐鶴だけだ。


「戦いたいが、戦えないんだよ!お前に何がわかる!」

鼎は悔しげな声を上げた。彼女が人前で感情を露にすることは滅多にない。


「き、きりゅさん…きりゅさん落ち着いて…」
いちかはなんとか落ち着かせようとする。鼎は憐鶴を見ようとはしなかった。
憐鶴は話はまた間を空けてからにしようと言ってきた。一旦、憐鶴との話は終了となった。


「あなたが感情を露にするなんて珍しい。地雷を踏んでしまったようですね、私は…」



地下を出た2人。1階では霧人と桐谷が待っていた。

「なんか遅かったな」
「鼎さん、どうかしたんですか…?」
桐谷が心配する。

「憐鶴との話は一旦終わったが、まだ帰れない。あいつは私を見抜いた。私の中に燻っているものを見抜くなんてな…」


燻っているもの?


「きりゅさんそれ初耳…」
「そりゃそうだ。誰にも言ってないんだからな」


「鼎さん、本当は戦いたいのでは…」
「桐谷、わかったのか」
「でも無理だから悔しいんですよね。戦うと次はないから」
「あれからなんとか日常生活レベルには回復したが、戦闘はストップがかけられている。
身体はぼろぼろだからな」

「きりゅさん、憐鶴の言うことなんか真に受けなくてもいいよ!」
「…そうだね」


「次に憐鶴と話をする時は1vs1になる。おそらくそこで彼女は本題を出すだろうな…」



ゼノク・地下。
憐鶴は姫島と話をしている。


「意外と感情を露にするんですね、紀柳院さん」
「憐鶴さんが冷たすぎるだけに見えますが…。まるで氷ですよ」

「請負人をしているうちに、だんだん感情を無くしたのかもしれません。
そうでもしないと請負人は出来ませんから」