異界で鼎が襲撃されてから数日後。本部隣接の組織直属病院の鼎の病室には馴染みの仲間達がいた。


「たいちょー、きりゅさん…死なないよね!?」
「傷は見かけ以上に浅かったから、大丈夫だとは思うけど…意識はまだ戻らないんだ…」

いちかと彩音は遠目に鼎を見てる。御堂はあれからほとんど付きっきりで鼎の病室にいた。


「鼎さんが襲撃されるって想定外だよ…。御堂さん、ずっと手を握ってるんだ」

晴斗は御堂を見た。よく見ると鼎の手を優しく握ってる。
「あいつに寂しい思いをさせたくねぇんだよ。…だから襲撃した怪人が許せない。なんの狙いで鼎を襲ったのか」

「きりゅさん死んじゃやだー…!」
いちかは泣きそうな声を上げる。


少しして。ベッドに動きが。


「勝手に殺すな…」

鼎の低い声がした。御堂は慌てて棚の上に置いてある、仮面を鼎の顔に着けようとする。
鼎は御堂から仮面を受けとると、呼吸器を外し手際よく仮面を着ける。

彼女はベッドから起き上がろうとした。御堂達が止めようとする。


「鼎、寝てなきゃダメだよ」
「寝てろって。傷口開いたらどうすんだよ」


鼎、なんとか起き上がるもそのままの体勢。傷のこともあってか、うまく動けないらしい。


「まだ退院までかかるんだから回復に努めろよ」
御堂が優しく声を掛ける。

「あ、あぁ…」



しばらくして、鼎はぽつぽつと話し始めた。

「襲撃された時…『終わりですよ司令補佐』と言われたんだ。あれは絶鬼の手下に見えたよ」
「あ…明らかに鼎を狙っているじゃねーか…」


「憐鶴(れんかく)は?」
「姫島と一緒に異界に行ったぞ」

「あいつも狙われそうな気がするんだが…」
「お前は人の心配しないで自分の心配しろよ」



異界。憐鶴と姫島はずんずん進んでいく。

「紀柳院さんが襲撃されてからそんなに経ってないのに、無謀すぎますって」
「逆に今ならチャンスかもしれないんです。敵は油断していますから」


憐鶴はあの場所へ来た。よく見ると転送装置のようなものを発見。

「装置には見えないですが…?」
「これをこうして…こう操作するのでは?」

憐鶴は石で出来たアナログな謎装置をいじる。すると森に変化が起きた。
森で眠らされていた市民が一斉に元の世界に転送されたのである。


「早く戻りましょう。次の主戦場は異界じゃない。私達がいる世界です」

憐鶴と姫島は異界を後にした。



異界に飛ばされた一般市民の恭平はやがて目を覚ました。


…あれ?ここは…街?


周りにも異界へ飛ばされた人達が次々目を覚ます。


長い夢でも見ていたのか…?頭がガンガンする。


目の前の風景は見慣れた街だった。戻ってきた…のか?よくわからないけど。



これを見て黙ってないのは絶鬼。


「おい、禍鬼。お前ちゃんとやったのか?
供物の人間が消えている」

「馬鹿な…!あの時紀柳院は刺したはずだ…」
「じゃあ紀柳院以外の人間だな。考えられるのはあの…『闇の執行人』、泉憐鶴かな〜?禍鬼、憐鶴を倒せ。完膚なきまでにな。
紀柳院は死んだはずだからねぇ」


絶鬼達は鼎が生きていることを知らない。



憐鶴は本部隣接・組織直属病院に来た。鼎の意識が戻ったと聞いてやってきたんだ。


「異界の人質は全て解放しました」
「解放出来たのか!?…痛っ…」

「紀柳院さんは大人しく寝ていて下さい。回復まで時間を要しますから」
憐鶴は鼎を寝かせる。


「人質を解放したとなると、異界よりもこっちの世界が危ないのではないか?」
「おそらく、次の主戦場は…私達の世界です。紀柳院さんは大人しくしていて下さいね。傷に障りますから」


憐鶴は意外と優しいのか?

異界の件以降、妙に優しくなっている。…気がする。



本部では定点カメラの映像を見ていた。2ヶ所の空間の切れ目がない!?

「北川、悪いなまた来て貰って。鼎が負傷して入院中だからさ…」
「いいんだよ。それにしても空間の切れ目が消えたって…嫌な予感しかしない…」

「敵がこっちになだれ込んで来そうな気がする…」
「監視は強化してるんだろ」
「そりゃあしてるさ。絶鬼は相当世界を滅ぼしたいらしい。最近地震…でかくなってるし」


地震と絶鬼は関係してるのか?…と半ば疑う北川元司令。


「紀柳院は大丈夫なのかい?」
「意外と傷は浅かったって。意識も戻ったよ」

「良かった…」
北川、安堵の声を出す。



世界の危機がじわじわと訪れようとしていた。