パーティーという名の飲み会当日が来た。果たして何人集まるのだろうか。
絶鬼戦から約1週間経過していたのでタイムラグこそはあるが、ようやく勝利のお祝いパーティーが出来るわけで。

会場は都内にある、お洒落なカフェバーだった。その店は御堂な顔見知りの喫茶店のマスター・藤代の知り合いが経営しているという。
御堂は店の外観を見て既視感があった。


…あれ?ここ来たことあるぞ。たぶん。


「和希、店の前でぼーっとするな。入るぞ」
「わりぃ」

鼎に促され、御堂は入店。鼎も続く。店員に通された2階の部屋には既に参加者が集まり始めていた。


「やっぱりたいちょーときりゅさん来たー!」
いちか、めちゃくちゃ嬉しそう。

「思っていたよりも人数少なくないか?」
鼎が呟く。確かに人数がやけに少ない。よく見るとまだ北川さんと暁親子が来ていない!


「室長」
「和希、どしたー?」
「長官は来るのか?」

宇崎、少し間を置いて。
「長官は向かっているよ。そろそろ着くってさ」


来るんかいっ!!


少しして、北川と暁親子が到着。晴斗はテンション上がってる。
陽一は北川と宇崎に軽く挨拶していた。

「へぇ〜、蔦沼長官も来るんですかー」
「陽一、長官に会うの久しぶりだろう?」
「北川はあれから何してたんだ」

「一般市民に擬態してるよ。臨時隊員の出番は当分なさそうだからね〜。あれから怪人まるっきり出てないでしょ」


ぎ…擬態……。

陽一は「擬態」というパワーワードにたじろぐ。
陽一も北川同様、臨時隊員なので平和になった今は完全に一般市民と化しているから同じ穴の狢だなと。



しばらくして、ようやく蔦沼と西澤が到着。パーティーの用意は出来た。

「会食スタイルじゃないから皆ラフにしてね。楽しもう!」


それ長官が言う言葉か!?

会場にいた長官以外の全員がそう思った。ラフすぎやしませんか!?


参加メンバーは私服と制服が半々だった。晴斗にはまだ制服が支給されてないので私服。
蔦沼・宇崎・西澤はきっちり制服姿で来てる。北川と陽一はラフな私服で来ていた。



こうして和気あいあいとパーティーという名の飲み会が始まった。和やかな雰囲気でまったりしている。


この飲み会に集まった参加者は鼎・御堂・いちか・彩音・桐谷・霧人・晴斗・宇崎・陽一・北川・蔦沼・西澤・憐鶴(れんかく)・苗代・赤羽の15人。

思っていたよりも少ない。ほとんど馴染みのメンバーだ。そこに憐鶴達執行人一同と臨時隊員2人(北川と陽一)が加わった形。


鼎は飲み会が始まる前に、物陰で仮面から食事用マスクにさりげなく替えている。


鼎がいるテーブルには彼女が食べやすいように料理に工夫がされていた。あらかじめ彩音がお店に言っておいたらしい。


いくつかある大皿料理は、鼎が頼めば食べやすいサイズにしてくれる親切仕様。

彼女の食事用マスクの開口部が小さいので、どうしても配慮が必要になる。



鼎の隣には御堂と彩音がいた。彩音の隣にはいちか。


「きりゅさん、器用に食べてるよね」
「慣れだ慣れ。練習はキツかったんだぞ」

彼女は黙々と食べている。鼎用のパスタは食べやすいように麺が短くされている。
カフェバーはイタリア料理がメインのお店。いちかはカルパッチョを美味しそうに食べている。

「おいちー♪」


しばらくしてから藤代がやってきた。藤代はこのカフェバーの店主に会いに来ただけみたいだが。


「柏、どう?ゼルフェノアさん達の様子は」

「なんか和気あいあいとしていて温かいよ。
平和になったから緊張が解けたんだろうね〜。初めて長官と本部司令、司令補佐を見たがカッコいいなぁ」


柏と藤代は知り合い同士。


「紀柳院さんに出す料理は配慮したのか」
「駒澤さんからあらかじめ聞いていたからね。『紀柳院さんは食事用マスク着用で食べるから、小さめに食べやすくして欲しい』って。
彼女の食事用マスクを見たけど、開口部が小さいから食べるの大変そう…。藤代も食事は大変なんだろう?同じ仮面生活をしている者なんだし」

「彼女とは違った意味で大変さ」


トイレに行こうとした御堂は藤代を見る。
「なんで藤代がいるんだよ!?」

御堂、若干酒が入ってる。藤代は冷静。


「柏に会いに来たんだよ。今日の僕はヘルプ要員だから、君たちは心おきなく食べなって」
「お、おう…」

「それより…トイレは大丈夫なの?」


御堂、藤代に言われてトイレに駆け込む。ギリギリ間に合った模様。
トイレから出た御堂は少しだけ藤代と話をした。


「お前の知り合いが柏なの!?…柏って…」
「和希忘れたのか〜?同級生だったじゃないか。あと和希は1度、この店に来てる」


あの既視感はそれだったのかー!


なかなか戻ってこない御堂を心配して鼎が降りてきた。店の1階はがらがら。

「和希、何やってるんだ。遅いぞ。油売ってたのか?」
「藤代・柏悪い。鼎が来たからまた話は今度な〜」


御堂、鼎に連れられ2階へ。その様子を見た2人。


「あれが紀柳院司令補佐…。確かに食事用マスクの開口部小さいよね。柏、ナイスアシスト」
「お前に言われたくないけどなー。ヘルプ要員ならこれ持ってけよ」

「はいはい」

藤代、柏に頼まれた料理を2階へ持っていく。



カフェバー2階では。


彩音は酒が入り泣き上戸に。いちかはなだめるしかない。

「私は鼎のことが心配で心配で…。幸せになって欲しいのーっ!」
「あやねえわかるよ。わかるから泣かないで〜」


普段の彩音と全然違うため、戸惑ういちか。酒が入ると泣き上戸って…。
いちかはお酒が飲めないのでオレンジジュースやコーラを飲んでる。

御堂も酒が進んでいたようで、こちらは酒が入るとペラペラ喋るタイプでめんどくさい感じ。
御堂の話に付き合わされる苗代と赤羽が不憫。彼らのテーブルが御堂の隣だったがゆえに、彼の話に付き合わされた協力者ズ。


鼎は身体に障るため、酒は一切飲まない。
結果的に憐鶴とゆるーく話をしてる。


「憐鶴、執行人…どうするんだ?続けるのか」
「…続けようかなと。まだ迷っていますけどね。依頼は来ますから」

「別に、自分のペースでいいんじゃないのか」
「…そうですね。アドバイスありがとうございます。平和になったおかげで依頼も激減したのでゆっくりと考えます」

「憐鶴は昔の私に似ているな…」
「…え?」

「なんでもないよ」


憐鶴は任務中だけ冷たい言い方をするんだな。本当はそんな人じゃないんだ。
あえて心を鬼にして殲滅していると改めて知る。


御堂の話はヒートアップ。


「苗代と赤羽は恋人いんのー?」
「いないですよ」
「いないって」

「守れるものがあると強くなる。これマジな。人間恋すんと変わるもんよ」


御堂は酒が入るとかなりめんどくさくなるらしい。鼎は御堂を制止した。

「和希、それくらいにしておけ。2人とも困っているだろ」
「悪かった!」


御堂、土下座して謝る。酒が入っているせいかオーバー。鼎はおろおろ。

「土下座辞めろ!恥ずかしいだろ!!和希!もう酒飲むなーっ!」


鼎、意外と強い。あの御堂が平謝りなんて。たぶんお酒のせいだろう。しかも大袈裟に土下座。



そんなこんなであっという間に時間は過ぎ、飲み会は終わった。桐谷が御堂・彩音・鼎を送ることに。
いちかは先に代行を呼んでいた。その後桐谷の車内に合流。


代行が来たところにいちかが2人に声を掛けた。

「苗代さん達、災難だったっすねぇ…」
「酒入った御堂さん、めんどくさいよ〜」


協力者ズは災難だったようだ。御堂に恋愛論を説かれてたじたじだったとか。なぜに恋愛論!?

彩音は帰るまでずっと泣いていた。どんだけ泣き上戸なの…。


意外としっかりしていたのはいちか。普段はいじられがちないちかだが、酒の席では逆転。

「たいちょーとあやねえ、お酒の飲みすぎは良くないよ?きりゅさんが戸惑ってたからね」
「ごめんなさい〜」


この日の夜はやけに長かった。



そして、翌日。宇崎は鼎にあることを話すのだが。