ある少年の物語…3 おくりもの…

少年とお姉さんが冒険を始めてを始めて50日ぐらいが過ぎました……

そんなある日……




ここは雑多な物が並ぶ シュリンガー公国 市場です…

市場とは冒険者自信が不必要な物を下取りに出し Zellや錬金石に変えたり
採取したアイテムを出品して Zellを得たりする場所です……


下取りは値段が決まっていますが 出品アイテムは冒険者自身が値段を決められるため アイテムの値段が上がったり下がったりします……


珍しいアイテムを手に入れようとする者……

一攫千金(いっかくせんきん)を狙う者……


人が集まり活気に満ちています……


そんな場所に 少年とお姉さんは訪れています…
少年は お気に入りのゲルミヘッドを被っていますが人々は特に 気にも止めません……
変な格好をした冒険者など見慣れた風景…
いつもの日常なのです……ゲルミヘッド程度では誰も見向きもしません……



「…この格好 なんか言われる 思(おも)うたんですけど……スルーされとります……」



「…そうね 言っては…なんだけど……普通ね……」



「ワイ 緊張して損したわ…」



「そうだわ…市場に 何かあるかも…覗いてみましょう」



市場に着くと
さっそく お姉さんは 並べられた品を覗きこみます……



「あっ ワイも……」



少年もいっしょにその品々をながめます………


その一角(コーナー)は
様々な角(つの)が
並(なら)べられていました……



「あっ……あれは!」



りっばな角に目が吸い寄せられます……



「まぁ!見事なトナカイの角(クロースホーン)…」



お姉さんも感嘆の声を上げます……


それは昨年のイベントでのみ手に入れる事ができた
限定品だったのです……

ふたりがこれまで溜め込んだ Zellでは とても買えない品でした……



「………難しいわね」



「そう……ですね…」



ふたり顔をつき合わせて
ため息をつきます…


………


ふたりは悲しげに市場を後(あと)にします……



「なんか Zellを稼ぐ方法はないでしょうか…」



「難しいわね……地道に魔物討伐をするしか……」



話しながら二本サクラ前まで歩いて来ました
公国の象徴でもあり雪が積もるほどに寒いのに満開の花を咲かせ続ける不思議なサクラです……

その近くに掲示板がひっそりと立っていました…

何気(なにげ)なしに ふたりは ひょいと覗きこみます…



“:ジャガイモ 求む!”


“:クロケット出品中!”


そんな書き込みが見えます……



…!!

「これや!!」

「お姉さん! イモ掘りです
……さっそく 行きましょう!」



駆け出す少年に手を引かれお姉さんは困惑顔……



「(*_*) ……ち ちょっと……
説明して!?」



走りながら少年は説明しました……



「イモを掘って 一儲(ひともう)けするんです」



「…? ジャガイモを?」



「そうです!
クロケットに合成すれば
もっと 売れるはず…」

「毎日 イモ掘りです…」



「…市場に 出品して
Zellを増やすのね…」



「そうです…“雪山と草原”…“滅びの村”…“国境”北側… この3ヵ所を回って掘るんや…
どうですか? ワイの考え……」



「上手く回れれば…1日 21個…は採取できるかも…」



「あとは相場価格しだいね…」



「新しいイベントが始まれば 欲しがる冒険者(ひと)
は絶対いるはず……

そこを狙って 大もうけや……」




こうしてふたりは毎日ジャガイモ掘りを始めました…



少年の考えは的(まと)を得ていました……
ジャガイモやクロケット
は出品すれば たちまち売れてゆきます……



あれから10日が過ぎようとしていました……



ついに目標額を越えました
ふたりは目的の品を手に入れる事ができたのです……


「やったわね…」

大きな包みを抱(かか)えてお姉さんは少年に話しかけます……



「おおきに…感無量です」



少年も答えます……



「わたしは宿の予約を入れてくるから 先に酒場に戻ってるわ…

きみは どうする?」



「ワイは少しブラついてから戻ります…」



「…そう
早く帰って来てね…」



お姉さんは宿兼酒場に戻って行き 少年は市場に残ります……

日も傾き 暗くなって来ました……


(…ワイ このままでいいんかい……

お姉さんは ワイの角(つの)を 買うために ごっつう協力してくれたんや

ワイ お姉さんに何も返しとらん……

どうしたら ええんや……)


少年は市場の前で 考え込んでいます……



「…お兄さん……
そこの…ゲルミヘッドの
お兄さん!」


「へっ?
…ワイ?」



「そうです あなたですよ…」


市場の お姉さん店主に
呼びかけられ
少年はビックリ………



「いつも ご利用 ありがとうございます…」



「あっ…どうも……」



あわてて お辞儀をします……



「何か 探し物ですか?」



辺りは暗くなり 店先に吊るされた 暗くなると光る鉱石を使った明かり(ランプ)が灯(とも)ります……


「実は…お姉………いえ
ワイのパートナーに贈り物をしたいんですが…
何を選べばいいのか わからなくて……」



「……あぁ 黒ぶちメガネを掛けた緑髪の……」

「さっき お買い物をされた……」



「そうです ワイのパートナーです!」



「よく お見えになります

おひとりで品物を見てますよ…」



…!!



「何を見てました?」



「そうですね…“クロースホーン”と いっしょに……
“オニの1本ツノ”を
見てました……」



「それや!」



「えっ?」


突然の少年の叫びに
市場のお姉さん 驚いたみたいです…


「そのツノ…
売ってください…
頼んます……」


しかし この品も2月のイベント限定品……
クロースホーンより安いとはいえ 高額商品です……
手持ちのZellでは足りません……

普段採取しているアイテムを貸し倉庫からひっばり出し片っ端から下取りに出していきます……



「…まだ

たらん……」



もう売る物がありません…

「お願いや お姉さん
その“ツノ”ワイにゆずっとくれ……

このとおりや……

……頼(たの)んます……」


雪の積もる冷たい地面に額を擦(こす)りつけ
少年は土下座します……


日は沈み 周囲(まわり)は暗い闇のなか 気温も下がり 店先の明かり(ランプ)がぼんやりと辺りを照らしています………



「そんな お客さん こまります…」



市場の前に土下座されて
店主のお姉さんは困ってしまいました

これでは 店を閉める事が出来ません……



「あんさんが首を縦に振るまで ワイはテコでも動かへんで……」


少年は土下座したまま居座るつもりです……




「おぉ〜我が弟子よ…
これは どうしたことだ…」

「あんまり遅いので きみのパートナーに頼まれ 様子を見に来たのだが……」


「どうでも いいけど
何で?ボクまで………」



「その声は…

冒険師匠!

バトル師匠!

……イベント師匠!!」



声をかけられ 思わず頭を上げる少年の目に いつも酒場にたむろして助言をくれる3人の姿が飛び込んできました………



「じつは …かくかく しかじか…………」



……少年はパートナーに贈り物をしようとしますが
肝心の品があと一歩で手に入らない事を3人に説明します………



「……なるほど 話はわかった……

その足りないZellは我々で払おう…」



「ほんまでっか!?」



「弟子の窮地(きゅうち)を助けるのは 師匠のつとめ
何も問題ない……」



「おおきに……
恩にきます……」



「まっ これも師匠として
しかたないよね……」



「おかげで 助かりました〜」




「これで よいかな 女店主……」



「はい!ありがとうございます……

…これはサービスです……」


師匠達が足りないZellを支払ってくれました…
そのうえ店主のお姉さんは“オニの1本ツノ”をキレイな包装紙に包みリボンまでかけてくれました……


「良かったな 弟子くん…」


「酒場に戻って お祝いだな…」



「へぇ ……皆さん ほんまにおおきに……ワイの忘れられへん思い出や………」



話ながら4人は酒場に着きました……



「よぉ!少年…
遅かったな………」


酒場の主人が陽気な声をかけてきます……



「もぅ 心配したんだから…」



お姉さんが少年に抱きついてきます……


「ちょ……お姉さん…
放してぇな……」


少年は暴れますが お姉さんの方が大きいので振りほどくことが出来ません…



「まぁまぁ 二人とも
今日は記念日 パーティーを始めようじゃないか…」

冒険師匠の声に


「記念日って 何です?」


「今日は君たちが冒険を始めて ちょうど60日目なんだ……」

イベント師匠が続きます


「“大体分かる冒険者”から“先輩冒険者”に称号(しょうごう)が変わるのだ……」


バトル師匠が説明します…


「今日は そのための お祝いよ…」



お姉さんがしめます…



「へっ? そうだったんでっか?

ワイ ちぃ〜とも知らんかった……」



皆 少年に内緒にしていたみたいです……



「この“クロースホーン”は その…記念の品として受け取って欲しいの……」



「えっ? そうだったんでっか!?」



「じつは ワイからも
お姉さんに 渡したいものが あるんですわ…」



「まぁ! なにかしら?」



お姉さんは期待を込めた眼差しをしています……



「……これを 受け取ってください!」



少年は市場で手に入れた
包みを差し出します……



「わたしに?

……うれしい♪」


お姉さんはさっそくリボンをほどき 中身を取りだします

「ありがとう!
大事にするわ!!」


さっそくアクセサリー
“オニの1本ツノ”を額に装備します…



「どう?
似合うかしら……」



「似合っとります……

ほな ワイもさっそく……」


少年もアクセサリー“クロースホーン”を装備します


「どないです……」



ゲルミヘッドから立派なトナカイのツノが生えました……



「これは…なかなか……」



「ツノの生えたゲルミ?か……」



「ツノゲルミ……

……ツノミだね

これは……」


3人の師匠達が感想を述べます……



「ぅん ツノミに決定ね!!」


お姉さんが宣言します…



「皆さん……
ほんまに おおきにや…
今日のことは忘れへん!
この“ツノ”大事にするで……」


「わたしも 大事にするわ……」



「あ〜 うん……
お互いに“ツノ”の交換も終わったところで
始めてくれないか?」



酒場の主人がしびれを切らしたようです……



「みんな! ジョッキは
持ったわね……」



「「「「「乾杯!!!!!」」」」」




パーティーの始まりです!!



…………おくりもの……

ーおわりー

ある少年の物語…2 かぶりもの…

シュリンガー公国 酒場前
大通り……
そこは新人からベテランまで様々なひとでごった返しています……

いつの頃からか 頭装備や アクセサリーを使って
様々な仮装をする人々が現(あらわ)れはじめました……

…やがて…それが定着し……

毎日が 仮装パーティー
ハロウィン 百鬼夜行 です……



そんな ある日……

新人冒険者になった少年はパートナーのお姉さんと
日替わりの依頼を酒場の主人から受けて公国の宿を出ます……

すると……


「なっ なんや アレ!……」

少年の目に飛び込んで来たのは 仮装した集団……
そのなかでも 異彩を放つ 人?が いました……


雷(ライトニング)を受けた様な衝撃です

そのインパクトは後の少年のいきかたを大きく変えてしまいます………



「……きみ ………きみ!…」



どれくらいたったのでしょうか?
少年はパートナーのお姉さんの声で我にかえります…


「…い 今のは………?」



「…良かった…気がついたのね……」



立ったまま気絶していた少年…緑色の髪のお姉さんが膝をつきその肩を抱き優しく揺らしています

少年のポニーテールにした柔(やわ)らかそうな髪が
ゆらゆらと揺れて……

お姉さんは飽きる事なく
見つめています……



「あっ……居(お)らん……」


「その 人? なら去っていったわよ…」



少年は呆(ほう)けた顔をしています……



「なんや ごっつう凄いもんを見たような……」



「そんな事より“日替わり”に行きましょうよ…」


少年の顔に自(みずか)らの胸を押し付け その感触と少年の反応を楽しんでいます…

少年はビックリするやら 恥ずかしいやら

目を白黒させています……


「ちょ お姉さん! わかったから離れて……」



「ふふっ 元気になった?

じゃあ行きましょうか♪」


少年は お姉さんに遊ばれています……
胸のドキドキがおさまりません……

(…えぇ 匂いやったなぁ…おっぱいも大きくて……
こう 柔(やわ)らこうて……


………………


悪い人や ないんやけど…
こう しょっちゅう 抱きつかれると ワイの身体(み)がもたん……
どうにか ならんもんやろか……)



少年は考えますが
いいアイデアが出ません…
公国の門をくぐり雪の積もる長い階段を 降りよう…と……



「…へっ?

…………」



「あっ! きみっ!!
…………」



階段に積もった雪が昼間溶け夜には凍り……
滑りやすくなっていたのです
考え事をしていた少年は
足を滑らせ
スッてんコロリン!


長い階段を転がり落ちて行きます……



「わぁー!!……

…またかいな

………お助け〜〜!!」



「ちょっと 待ちなさい!!
きみッ!!……」



あわてて お姉さんは追いかけます…



“雪山と草原” そこは魔物が徘徊する危険地帯…
“ゲルミ”や“コノミ”奥の方には“オーク”が見えています……




……ブヨン………

転がる少年は何かブヨブヨしたモノにぶつかって
止まることができました



「……あいたたたっ
(^_^;)えろ すんません……」



謝りながら顔をあげると……



「…でっかい背中やなぁ…
って!ゲルミやないかい!!」



そうです 魔物の群れにぶつかって少年は助かったのです……


「あわわ どないしょ……

ワイひとりじゃ……
誰か 助けてぇな………

(/≧◇≦\)お姉さ〜ん!!」



「……もぅ しょうがないわねぇ……」


肩で 息つぎをしながら
やっと お姉さんが追いつきました…


「ちょっとマズイわね……
ゲルミ2体にゲルミパパ……

教会行きになりそうね……」


お姉さんは美しい眉間にシワを寄せ考えます……

黒縁メガネの奥で瞳が静かに燃えています……
言葉とウラハラに魔物に勝つ算段をしているようです


「きみッ!まずは お供から倒すわよ!
私たちから向かって左!倒したらすぐに右!
……パパは最後よ!
お供を倒すまで手を出さないで!!」


少年に指示を出しながら
お姉さんは片手剣“青銅の剣”を振(ふ)るいゲルミに攻撃を続けます…



「危なくなったら“ガード”よ!

“プネウマ”は本当にヤバくなったら使って回復…」


少年も片手剣“リズビット”を必死に振り回しています……



ゲルミ族は“水属性”です“土属性”が弱点なので
“土属性”のスキルで攻撃するとダメージが大きくなります……


たまたま付けていた“ソイルスラッシュ”のおかげでお供のゲルミを倒すことができました…

しかしゲルミパパは強敵です……
ダメージは与えているのですが高い体力はなかなか減りません……


スキル“ガード”で受けるダメージは半分とはいえ
なかなか痛いです……



「だいぶ減らしたはず
なのに こっちが死にそうや……」



かわいい顔を歪(ゆが)めて少年は耐えています……



「…そうね ダメージの大きな技が欲しいわね……」


お姉さんもかなりダメージを受け 飛び散ったゲルミの体液が青い公国服を汚しています……



「あの技が出れば……
逆転できるのだげど……」


「……あのわざ?」



少年の青い公国服も長い戦闘で汚れています……



「わたしときみで出す
…協力技

“ブリッツシュペーア”

……ふたりのタイミングが合わないと出せないわ…」


「それが 出来れば 勝てるんやな?」



少年は何か決意したようです……



「えぇ……
わたしが“ライトニング”を放ったら
きみは“ヴァーティカルエッジ”を放つの………

タイミングが合えば
協力技“ブリッツシュペーア”が発動するわ……」



お姉さんは“ガード”で耐えながら 少年に説明します……



「なんだか わからないけど
わかった!!

バチバチって来たら
シュピーンとなって
技をバッて出せば ええんやな!」



「(・・?) …ま まぁ…
そんな感じね (;^_^A
……」



お互い わかったような…
わからないような…
そんな感じで納得しあいます……


そのとき “ガード”が解け 別のスキルの発動が可能になりました…


「来たわ!

……いくわよ!!

スキル発動 “ライトニング”!!」



お姉さんの左手に風が集まり渦が巻きます…
小さな放電が始まり
それが結界の中で大きな雷に成長すると 左手を前につきだし魔物に放ちます…


「来た来た 来たで……

シュピーン!や」



音と共に少年のスキル“ヴァーティカルエッジ”が“ブリッツシュペーア”に変化します…



「今や!!

スキル発動!!

“ブリッツシュペーア”!!」



魔物ゲルミパパに“ライトニング”が命中します


高く掲げた少年の片手剣“リズビット”にお姉さんが続けて放った雷がまとい付きます……
そして少年は“リズビット”を大上段から 一気に降りおろします



「ゆうへっど ボロンしてみいや!」



技は見事に命中
魔物ゲルミパパの首がゆっくりと落ち
その身体は黒い霧となって消えていきます……



「……終わったわね」



「あわわ 本当に首が落ちよった……
成仏して〜やぁ……」



「…! あれはゲルミパパが たまに落とすアイテム“ゲルミヘッド”よ
頭に装備する防具…
似てるけど生首じゃないわ…」


「へっ!?
……防具?
念仏唱えんでも ええんか…」

「ほな さっそく……」


さっきまでの怯(おび)えはどこえやら
少年は いそいそと“ゲルミヘッド”を被(かぶ)ります……


「着るみん!
………どうですか?
ワイのすがた………」



そこには 公国の青い服を
ゲルミの体液で汚した
ゲルミがいました…
右手にはゲルまみれの片手剣を提(さ)げて………
なんとも凄惨なすがたです……



「あっ……う うん…
似合ってる…んじゃない…かな……」



ちょっと お姉さん引きぎみです……



「ほんまでっか?
ワイ 嬉しいわ〜」



お姉さんの方へ一歩近づくと お姉さんは一歩さがります……



「…?
どうしたの?
ワイ 避けられてんじゃ…」


「そ …そんなこと …ないわ……

まずは…剣を下に…置きましょ……

話しは それからよ……」



お姉さんは怖がっているみたいです…



「まぁ お姉さんが そう言うんなら…」



剣を足元に置くと
自分のすがたが剣に写りこみました……


……!!


「なんか これ 気に入っちゃた…
しばらく 被ってても いい?」



「(;゜∇゜) えっ?

ええ…いいわよ……」



「やった〜♪
お姉さんだーい好き♪」



少年はゲルミヘッドを被ったまま お姉さんに抱きつきます



「まっ …いいか」



あきれたようにお姉さんはつぶやきます…



こうして少年は お気に入りを被って冒険を続けます
ちょっと呆れぎみの お姉さんとともに……



では みなさん よい夢を…………



………………かぶりもの…
ーおわりー

あるボンドマスターの消失……エピローグ

「 :“彼” 元気かなぁ…」


ボンドチャットに書き込みが表示される
彼(か)の少年からだ……


「 :…あぁ 元気そうだった 今しがた 話してた……」

ワタシもボンチャに書き込む……


「 :マジで!!」


少年の驚きが伝わってくる…


「 :今 どこにいる?」


「 :現在 眠気とたたかい中…」


「 :違う! 今いる場所だ!!」

「 :公国5000chで睡魔と戦闘中……
落ちたらゴメン…」


「 :待ってろ 直ぐ行くからよぉ……
負けるんじゃねぇぞ…」


「 :団長……」



ワタシは牛車を飛ばし 公国へ急いだ…
伝えなければ“彼”の言葉を……



早(はや)牛車を飛ばし
公国の門を蹴飛ばしそうな勢いでくぐる


入ってワタシの右側に
何かいた……


「(゜Д゜≡゜Д゜)? 何処だ少年!?」



「あっ来た……
ここや ここ あんさんの右側や!」


王冠を頭上に頂(いただ)き緋色のマントを纏(まと)った……
………俵?が
そこに居た……



「あぁ……ポニテ黒ぶちメガネの美少年は何処に……」


「そげん 嘆(なげ)かんでも……あれはワイの仮の姿や」



「なにっ? それは ほんとうなのかい?」


「嘘やで 中身は少年や!
たまに幼女にも なるけどな…」


「変化の術を使うとは……
貴様 魔物?いや魔王か!!」

「そやで〜 頭上の“見栄の王冠”が その証(あかし)や!
まっ 嘘やけどな……」



「プッ ハハハ アハハハ……」

「…久しぶりだな 少年!」

「せやな… それにしてもあんさんノリノリやな(笑)」

「…少年 あんたとは実に気が合う……」


「せやな…で さっきの事は本当なんでっか
“彼”と会ったって…」


「…あぁ本当だ 話もしてきた……」


「“彼”は元気そうでした?」


「…あぁ 今までと変わらない いつも通りの“彼”だった」


「ボンド内で何か悩んでたんじゃないかって…
心配してました…」


「“彼”は新たにボンドを作って新人冒険者を育てるそうだ……」


「そうだったんやね…」


「それから 君をサブリーダーにと 推薦された……」


「えっ? いいんでっか
ワイの趣味で人 入れまっせ…」


「……君は“彼”からの信頼も厚い ワタシと このボンドを盛り上げて欲しいとの言付けも預かっている…」

「……“彼”の頼み“サブリーダー”の件……
受けてくれるか……」


「……ワイで 良ければ
引き受けまっせ」


「…ただし サブリーダーとはいえボンドマスターと同じ権限がある……
メンバーを入会させる事も退会させる事もできる……」


「…………」


「……勝手に退会させられた冒険者から恨みをかうかも知れない……」


「ワイ 目立つから恨まれたら怖いわ〜」


「それでもサブリーダーになってくれるか?」


「任せとき! ワイのちからでボンドをでっかくしたる!」



「…頼もしいな……」


「…まぁ メンバーの除名はワタシがやろう…
これもボンマスとしての務(つと)めだ……」



「あんさん……
何かツライことがあったらゆうてくれ 相談にのりまっせ……」


「……あぁ そうさせてくれ……しかし 俵?に言われてもなぁ……」


「ほっとき! これはワイの正装なんや!本体なんや!よ〜見てみぃ プリチィやろ?」


「ハハハ……まったく
君には敵(かな)わないな……」


「いやいや 二代目ちゃんには敵(かな)わへんて 」


「…汚れ仕事(メンバー除名)はワタシに任せて 君はメンバー勧誘を頼む
すでにワタシの肌は黒いからな……」


「何をゆうとります 健康的な日焼けやないですか
ワイなんて なまちょろい肌の色や そんなに気にせんときや〜」


「……ありがとう
これからもヨロシク頼む…」


「任せて〜な 大船乗ったつもりでいたってや〜」


「…泥舟の間違いではないのか?」


「きっついなあ……
あんさん ひとこと多いで……」


「…ハハッ 違いない……」



こうしてサブリーダーに少年はなったのでした……
このボンドうまく いくといいですね……
では みなさん よい夢を…

あるボンドマスターの消失………後編

ワタシ達は偶然にも
“彼”元ボンドマスターに再会したのだった………



ch(チャンネル)を切り替えワタシ達は ワタシ達しかいない平行世界へ移動した………



「前にも、ありましたね
こんなこと………」


「……あぁ そなたと初めて会った時だ……」


「……一本、どうです?」


彼の手にはタバコの小箱があった……


「……いただこう」


一本の火縄から二人はタバコに火を移す……


互いに無言で一口吸って煙を吐き出す……




「……何か あったのか?」

「いえいえ。」


「そうか……ならば なぜボンドを辞めた?
その理由(わけ)が知りたい」



彼はタバコを一口吸うと
話し始める……

「貴女(あなた)方の力添えで、あのボンドはじゅうぶんに育ちました。
これからは貴女がボンドマスターとしてボンドを育てていってください。」



「ちょっと待ってくれ
ワタシにボンマスは無理だ考え直してくれ…」


「貴女(あなた)には、じゅうぶんに資格がありますよ

会話の無かったボンドに
貴女(あなた)は挨拶を根付かせ、会話の糸口を作った」


「ワタシは ただ 当たり前の事をしただけ たいした事はしてない」


「今 このボンドが会話で満ちているのは そなたが 彼の少年を勧誘した おかげ
ワタシに人を観る目はない……」


「あの少年をサブリーダーに、私は推薦(すいせん)します。
二人で協力すれば、きっと上手くいきますよ。」


「………少し 考えさせてくれ…」


タバコから登る紫煙を見つめながら



「……そういえば
まだ聞いてなかったな
ボンドを辞めたあと どうしてる?」



彼は再びタバコを深く吸いゆっくりと煙を吐き出す


「……私は新たにボンドを設立し、そこのマスターをしています。」


「……やはり そうか プロフィールにボンド名があったからな……」


「私は、ボッチ冒険者を救いたいと考えて
今のボンドを立ち上げました。」



「前のボンドと掛け持ちは
考えなかったのか?」



「今のボンドは設立したばかりです。
こちらに集中したいのです。」



「そなたの決意は 理解したマスターの件 引き受けよう……

……いつでも戻って来て よいのだぞ
そなたの作ったボンド
そなたの故郷(ふるさと)だ…」



「はい、その時はマスターではなく、いちメンバーとして向かい入れてください。」


「……承知(わかった)
その時 ワタシはマスターとして
そなたを歓迎しよう……
だが そなたはワタシにとっては特別な存在だ
マイマスター……」



「自分勝手なお願いですが、引き受けていただきありがとうございます。
そちらのメンバーにも伝えてもらえますか?」



「…わかった 伝えよう……ところで そちらのメンバーは育っているのか?」



「はい、3人ほど……
雑談にも応じてくれますし狩りにも同行してくれます。」



「そうか……順調なようだな……
いつか そちらのボンドと 共同イベントなどが出来るといいな……」



「そうですね、いつか出来るといいですね……。」



二人のタバコは燃え尽きつつあった……



「………これから 何処(どこ)へ?」



「私のボンドを育てる為に…。」



「ワタシもボンドの為に…

また この世界の何処(どこ)かで……」



「ええ、またお会いしましょう、この世界の何処かで…。」




こうして二人はアブル連邦城塞都市入り口でそれぞれ別れた……


お互いのボンドを育てる為に……



あるボンドマスターの消失………中編

ボンドマスターである“彼”が失踪して3日が過ぎた……

…………


ワタシは深夜のレイドボス戦を終え アブル連邦城塞都市に居た……




「これから 日替わりの依頼に行くんだよね……」


パートナーが聞いてくる


「……あぁ そのつもりだが……」


ワタシはレイドボス用から通常戦闘用にスキルを切り替えながら 答える……


「……“彼” 見つからないね……」


「……そうだな…」


「ボンドのみんなも 心配してるはずだよ……

いったい どうしちゃたんだろう……」


「……ワタシは“彼”に対して なにか失礼な事をしたのだろうか?」


「きみにサブリーダーを任せるほど信頼してたんだよ……きみのせいじゃないと思うよ……」


「……しかし ワタシに相談は無く 消えてしまった…



「“彼″とは親友なんでしょ……信じようよ」


「……しかし…」


「きみは 今 司祭なんだから たとえ裏切られても 信じぬかなきゃ……」


「…公国の“司祭”資格試験官の言葉だな……
信じる心と神への祈りが ちからになる…

“彼”を信じ再会を信じる……
偶然の神にでも祈ってみるか………」


「人と人のきずなって きっと強いものなんだよ…
信じようよ…」


パートナーと話しているうちにワタシ達は連邦城塞都市入り口まで来ていた……


城門の傍(かたわら)に
見たことのある後ろ姿があった……


「……そんな……まさか?」

軍服を着た将校然とした姿 帽子から覗く空色の髪……



「……マ・ス・ター……」



ワタシは 思わず声をかけていた……

パートナーも驚きを隠せない……
両手で口を覆い目を大きく見開いている



ワタシ達に気付き男は振り返った…


「はい、お久しぶりです…。」
爽(さわ)やかな笑顔だった……

「あら?お久しぶり…」

彼のパートナーがテントの蔭(かげ)から姿を現(あらわ)した
両手に何か持っている
買い物帰りのようだった…

「もぅ〜ばか〜
心配したんだから〜」

ワタシのパートナーが彼に駆け寄りその胸をポカポカ叩いている


「心配を、おかけしてすみません…。」



パートナーの頭を優しく撫でながら 彼は 謝る


「うっ …うゎ〜〜ん……」

感きわまって泣き出してしまう……


「この娘は わたしが看(み)てるから あなたは行って来なさい 彼女と話があるのでしょう?」


泣きじゃくるワタシのパートナーを彼から引き取り
彼のパートナーが優しく
微笑む……


「お願いします……。」



「私達はch(チャンネル)を移動しましょう。」


「……あぁ ……そうだな……」

ワタシは やっとそれだけ言えた……
……涙が溢(あふ)れないよう我慢していたから………
前の記事へ 次の記事へ