………………



「う……う〜〜ん

………………………

ここは?」



草地に倒れていた
さな がボンヤリと起き上がりました



「やっと起きたか…

お前のほうからも コイツを説得してくれ…」



「貴女(あなた)は……

魔王アスタナ!!

どうして……

それに ここは“実り多き半島”……みたいだけど」


南国“マーロ共和国”領に位置する“実り多き半島”
青い空に白い入道雲が立ち登り 蒸し暑さを感じる場所です
さな は 青に染めた連邦服を着ていましたが ここでは暑すぎるようで
露出した肌が汗ばんでいました



「えっと…

ベルにゃん……は?」



彼女(さな)のパートナー
魔物のベルグニャンコ……
本当は もっと長い名前ですが 呼びやすさと親しみを込めて さな は“ベルにゃん”と呼んでいました………



「さにゃ……

無事かにゃ?」



褐色の肌に 黄色く染めたマーロ服上下を着た
……ベルグニャンコ(ベルニャン)が 魔王(アスタナ)と対峙したまま声を掛けます



「じゃから お主と 殺り合うつもりは無いと 言っておる

もし殺り合ったら……

お主 死ぬぞ……」



2本脚で立つ キツネの様な姿をした 魔王アスタナが ベルニャンに凄(すご)みの効いた笑顔を見せます
額に生えた4本の細い角と後ろに伸びたゴワゴワな長い髪が相手(ベルニャン)を威嚇(いかく)する様に声に合わせて揺れています



「……たとえ 死ぬと解っていても戦わなければならない時が あるにゃ」



薄茶色の髪を逆立て ベルニャンは答えます 普段は下に垂れている長い尻尾も ピンと立っていました……



「魔王(アスタナ)…

ベルにゃん……

どういう事か 説明……してくれる?」



さな には状況が わかりません

“国境沿い(連邦)”に ベルニャンと居たはずなのに 目が覚めると
“実り多き半島”で魔王アスタナとベルにゃんが対峙しているのです



「よかろう

我が説明しよう

そして そちの方から
コヤツを説得してくれ…」


ベルニャンから視線を外(はず)さないで魔王(アスタナ)は さな に語り始めました………



「実は 我の姪(めい)ジュリアが結婚する事になってな
魔王たる我に恋愛感情というものは わからぬが
我が一族に連なる者なら
式に参加せねばなるまい

しかし 我が姪の相手となるロミーの父が反対しておってな
式の準備を邪魔をしてくるのじゃ……
そこで そち達に協力(あやつらのじゃまを)してもらいたいのじゃ…」



「協力? むりやり 拉致(さら)っておいてかにゃ?
ヒトに無理のかかる空間渡り(里超え)を強(し)いてにゃ……

……………………

さにゃ に にゃにかあれば……

ワタシはお前をヌッコロス………」



「じゃから 急を要する案件と言ったであろう?
それに ソナタのパートナーも無事ではないか…
我からの頼み 聞いてはくれぬか?」



「あのう〜
どうして わたし達なんですか?
魔王(アスタナ)さんが直接 行かれたほうが…」




「いや それがな
じつは 我は この国を追放された身
ここでは おおぴらに活動できぬ…
そこで お主達に我の代わりにこの国の王ケットシーの評判を落とすため…
いや 我の姪ジュリアとロミー王子の結婚の手助けをしてほしい…

それに ソナタらとは何かと縁があるからな……」



「えっ? 国? 王? 王子?

ここはマーロ共和国じゃ?………」



「ん?
言ってなかったか?
ここは ネコの国
お主らの知る “実り多き半島”によく似た 別世界さ……」



…………………………



にゃんこ・ウェディング前編より〜魔物のベルにゃん・その3〜1幕………つづく