前回のひとりごとから…



彼とパートナーがシュリンガー公国での子供のころの思い出話で盛り上がっている 傍で話にくわわれず

ワタシは とりとめなく
考え事をしながら
時折 焚き火に枝をくべて酒をチビチビと舐めていた…………




「……あぁ

そうだったぜ……


このブクブク石を

何の変てつも無い
汲み水に入れるとな………」



パートナーとひとしきり話した彼は ワタシの方を向き
パートナーの錬金術で作った中ジョッキに水を満たし“草原と雪山”で 採取できる“炭酸石”の欠片を放り込む………

………すると



ブクブクと泡立ってくるではないか


!!


ワタシは驚いた


炭酸石を入れた泡立つ水…
それに ジュブルフカを
注いだソレは

レモンと
炭酸石から連金合成する

ハイボールに似ていた……


「コイツを見るのが本当に初めてみたいだな……

シュリンガー公国の人間なら 誰でも 子供の頃にやる遊び なんだぜ……」

「記憶が無いってのは
本当なんだな…」



彼は一瞬
同情の表情を浮かべる


………



「まっ 思い出さない方が
イイってこともあるだろうよ……

ツラい思い出なら
なおさらだ……」



ワタシは無言でうなずく


幼い頃 目の前で 魔物に
両親を殺され みずから
記憶を封じた少女を
ワタシは知っているから…


「そんな 話より
いまを楽しむだろうよ……」



彼は明るく振る舞う



「それでだ……

さっきの泡立つ中ジョッキに

“ジュブルフカ″をお好みの量入れて……」



「さぁ 呑んでみな…」

目の前に差し出された
中ジョッキを受け取る

ひとくち 口に含むと……


彼から受け取った中ジョッキを ひとくち 口に含むと

…!!

あんなに強い“ジュブルフカ”が 何て呑みやすい酒に………



「そうか …この酒は
直接呑むのではなく
薄めて呑むモノだったのか……」


それに炭酸石から出る泡が酒の香りを強め
何とも不思議な味に……



ワタシは 驚嘆していた…

そんな ワタシの様子に
彼は満足そうに頷いている


パートナーの錬金術合成した“サーモンカルパッチョ″と“マーリンソテー″
が酒の肴に実に合う………



「……なぁ 公国は変わりないか?

先の連邦との戦争のあと
帰ってないんだ……」

彼はしんみりと語りだした

「コイツ(ジュブルフカ)を呑むと公国が恋しくなる

ろくな思い出も無い
貧しく寒い国だが
城の前庭の2本桜を思いだしちまう……

コイツ(ジュブルフカ)の香りのせいだな……」



彼は ひといきに
グラスを空ける


………


空いたグラスに
ワタシは
無言でジュブルフカを注ぐ………



「へっ…ありがとよ
オンナに酌をしてもらうのは いいもんだろうよ……
美人じゃ無いのが残念だが…」



…ワタシは無言で

ニヤリと笑った………