日替わり(ディリークエスト)の“ボンドに寄付しよう”を終え
シュリンガー公国教会を出た時 空は相変わらずの曇天(どんてん)……
人が通る道以外 雪が積もり 誰かが作った雪だるまが溶けずにその姿を留めていた……


そんな何時(いつ)もと変わらぬ公国の風景……


ワタシはパートナーと共に公国の名物 二本サクラのほうへ歩いていた……

咲き続けるサクラは緑の葉を繁(しげ)らせ その根本(ねもと)には雪はなく
緑の草が広がっていた……


と ワタシ達の目の前を こちらに走って来る 人影(ひとかげ)に気づいた…


おかしい…


ワタシは何か違和感を感じていた…




「あの人たち 並んで走ってるよ…」


パートナーが声をあげる


実に息の合った並走だった…



「…器用だな……」


ワタシも感心しつつ
何か奇妙さを感じた……

ボンドへ寄付する為(ため)か教会のほうへ走り去って行った……


興味を引かれた ワタシは 確かめたくなり後を追って教会の前に戻った…

用事が済んだのか 先程の人物が教会の扉を開け出てきた…


背丈はワタシのパートナーぐらい 二人とも暗めの衣装を着ている……
1人はオカッパの黒髪を
長く伸ばし褐色の肌ということが見て取れた……
……横に並ぶもう1人は…黒い狐面を顔に着け夜陰の外套(黒いマント)を羽織った……

……

「………あっ!!」


口元を両手でおさえ
パートナーは驚いていた…
ワタシも グゥの音も出せずに目を見張った……

よくよく観察すると あれは1人ということに気がついたのだ……




タネを明かせば何の事はない…


アバターの黒狐面と外套を左にずらして 浮かせているだけだった……


しかし ワタシ達は騙(だま)された…

見事な仕事としか言い様がない……


この世界に長く存在(い)るのだが 初めて見たのだ…………



「……まだまだ 新しい発見があるものだな……
さすがは百鬼が集(つど)う
公国5000と うたわれし場所(ところ)……」


「……そうだね
かんたんに出来て効果はバツグンだね……」





ワタシはさっそく真似してみることにした……


白狐面と旅人の外套(緑のマント)を
持っていたので

アバターの位置を調整して左に浮かせてみた……


なかなかうまくいったと思う……


しかし後ろが がらんどうなので もうひと工夫(くふう)必要だろう……


しばらくは このままでいようと思う………
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