前回のひとりごとから…


彼の敵意が無いことを確認すると ワタシも彼に敵意が無いことを行動で
しめした……





「……今まで 悪かったな
これは 俺の 詫びの気持ちだ……
受け取ってくれ………」



彼のカバンから取り出された物は……


“ウイリスカープ″

その数 30匹!!



「…こんなに受け取れない……」



…ワタシは遠慮した
パートナーも目を丸くする


「あんたらには これまで
迷惑をかけた……
こいつを 受け取ってくれないと 俺の気がすまねぇ……」


「頼む!!」



胡座のまま頭を下げる



彼もおそらくシュリンガー公国出身……
自分の食べ物を渡すというのは相手に対する
最大の敬意

同じ公国出身のパートナーは 彼の行為が意味することに驚いたのだ……
魚の数の多さに驚いたわけではない……
たとえ一匹でも その意味することは同じなのだ……

受け取らなければ
彼に対する侮辱になる

敬意には敬意を持って
応えなければ……



「……わかった
受け取ろう………」



ワタシは 決意した……

……………



…ワタシは彼の申し出を
受けることにした



「そいつは ありがてぇ
これで お互い怨みっこ無しだ……」

彼は 飛び上がらんばかりに喜んだ



「……せっかくだ
ここで一緒に食事でも
しないか? 素材も手に入ったしな……」



彼が驚きの表情をみせる


“同じ釜の飯の飯を食べる”

その意味することは
大きい……

お互い 仲間として認あう
事を意味していたからだ…

………

…………

彼はしばし考えた後



「わかった いただくぜ…」


真剣な面持ちで応えた……


…ワタシはパートナーに
ウイリスカープと昆布の
合成を頼んだ……


……しばらくすると
“フナの煮付け”が出来上がった……
フナを煮込んでこんぶの出汁とあわせた魚料理である


食事に掌を合わせ
箸を使って食する……



「うめぇ〜!!
こいつは なかなかなもんだ……」



彼から驚愕の声があがる


ワタシも舌づつみを打つ…
やはり最高のパートナーだ……



「こいつは 一杯やりたく
なったな……

あんたも いけるくち
なんだろ?」



ワタシはうなずく……



「そう 来なきゃ…」



彼は自分の膝を叩く



「こいつは 取って置きさ

……あんたと 酌み交わす
なら本望だろうよ…」



彼は いそいそと カバンをまさぐる……



「あった コイツだ コイツ………」



彼の手には細長いガラス瓶があった……

草原に立つ牛が描かれた紙片(ラベル)が貼られているのが
見えた……

……?



「…それは?」



ワタシも初めて目にする
お酒だ……



「コイツは魔物界でしか流通してないと言われている珍しい酒だ……

……試して見るかい?」



彼がニヤリと笑う……


…味わいたい……
どんな味が 香りが
するのだろう……

思わず 喉が鳴る……



「人の世界じゃ なかなか
お目にかかれない一品だ……
名は“ジュブルフカ”」



彼はトン≠ニガラス瓶を
目前に置いた

…ワタシは新しいモノ
珍しいモノは試さずには
いられないのだ

表面上は冷静さを装おっているが その心中は
早く呑みたくて焦っている……


「まずは乾杯といこうぜ」



彼はカバンから小さなグラスを3つ取りだし
ワタシに 1つ渡した……

ちょうどパートナーが
“サーモンカルパッチョ”と“マーリンソテー”の合成が完了し
こちらに持って来たところだった………