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BLOOD moon 〜(銀の月影)act:1―1

『幸せはね…色褪せても尚、輝きを持っているんだ…』


頬を緩ませ、語ってくれた男がいた。
感情が欠落していると自覚していた自分からしてみれば、意味が解らなかった。そもそも、幸せとは色んな形があり…手にしてみて味わえるモノだと思っている。
何不自由なく暮らしているのが幸せとか、この人が居て幸せとか。
だから、論理的に大差があるだけの違いなのだろう。
僕からすれば、家族と一緒に居るから幸せという形が出来上がっている。


「気色悪い…」


「どうした?」


『どうした?』じゃないよ。人の顔を眺めながら頬を緩めてるのが鳥肌もん。


「アンタしか居ないよ!何で、僕見て微笑み浮かべてるの?」


「そうか…。癒燐の強気は、母親譲りなんだな。逆に械譲りだったら人を貶す言葉が三倍にして返ってくるしな。そこは、母親譲りで安心…」


「はっ!」


「ソナタが械みたいな性格じゃなくって良かったという事だ。じゃなきゃ…三神帝の御上みたいな黒さを纏いそうな感じがしてならん」


とんだ取り越し苦労だね。
やっぱり、馬鹿なんだろうな…。
容姿は間違いなくモテルだろうし、地位も文句無しだと思うけど。僕に依存しているのは残念としか言い様がない。
何時になったら僕に飽きてくれるんだろうか。
確か、初めて逢った時に言った気がするんだ。『恋愛ごっこに付き合う義理は無い!』って…。

言い寄ってくる女神達が沢山要る中で、僕を選ぶ理由が解らないんだ。
第一、父上も彼が居ても気にしている様子ないし。
寧ろ、僕と彼を見て楽しんでいる感じだ。


「どうでも良いけどさ、いい加減…自分の屋敷に戻れば?両親達、心配しているよ?きっと…」


「…ふっ、心配してくれているんだったら嬉しいな」


切ない表情されたら、言いづらいじゃん。
何時もみたく、俺様的発言はドコにいったのさ。まるで、両親に愛されていない様な雰囲気を纏って…。


「―…癒燐、祖母様が呼んでるよ…」


「えっ」


「夜兎が三神帝まで付いていってくれるから、顔を出しておいで…」


「ほ、ほえっ…父上?」


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BLOOD moon 〜(銀の月影)プロローグ

啼いてはいけない…。

強くあらなければ。

―…弱音を吐くコトになる。

全て、あの日から己で決めた事なんだ。
あの頃から『涙を流さない』って、決意した。

一つ何かを覚える度に嬉しさを感じる事を諦めた。感情を徐に出せば、大切なモノを喪失(うしな)うと理解した。
だったら、一層…感情を無にしてしまえば。傷みすらも消えていくだろう。
そんな自分を見て、口元の端を上げた奴がいた。
相当な趣味をした奴だと思った…。

僕が周りから何て呼ばれているのかも知らないのだろうか。それとも、知っていて業っと自分の隣に居らせているのか。

だとしたら…コイツ馬鹿だろう。

頭沸いているって、絶対。


『癒燐…ね。アイツが付けそうな名前だな…』

初めて逢った科白が若干、いらっとさせたけど…。

否、若干じゃなくマジに殺してやろうかと心の奥で思わせてくれたよ。
畜生変人野郎こと、雨神 誠生(あまがみ せいい)。何でも話を聞けば、雨を司る神様の孫とかで…。
水鬼帝とも関わりが少なからずあるとか、父上が超絶な笑顔で教えてくれた。
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無題

九月も半ば過ぎようとする秋の季節。
涼しい風に髪を靡かせ、私は思うのであった。今年も色々とせかせかしい時期だったなっと。

可笑しな話だ…

毎年毎年、同じ事を思いながら静かな時間を過ごしているのだから。
私は紙に走らせていた万年筆を止める。


「んー…良い香りですね」


何処からともなく匂ってくる紅茶の香りに鼻をクンクンさせた。
間違っていなければ、ハヅキが紅茶を淹れているのだろう。仄かな笑みを浮かべ、私はまた万年筆を走らせてた。
最近は趣味である詩をちょくちょくと書く様にした。

天神界に居る頃より捗るのは多分…


「んっ、ウリエル?」


彼のせいかも知れない。


「寝てて構いませよ…」


「確かに眠くなるぐらい涼しい季節にはなったが、ソナタの楽しんでいる姿を見たら寝ているのが勿体無くなった…」


「私、そんなに楽しそうですか?」


「あぁ」
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伯父からの贈り物…

※(『血の旋律シリーズ』龍謌ノ音花〜の本編にも一部触れられている内容から…)


ある日、魅梛月さんから、本を頂きました。『この本は神艸が今だに解らない“伽”について書かれてるよ!!』と言われましたが、正直…伽って何ですか?

読んだら…解決しますか?


「拷問と、どう違うんだろう…」


††††


僕は可愛い甥っ子の為に世に言う“貴腐神”の方々とタッグを組み、一冊の本を作った。伽の意味を知った時の表情が楽しみでならない…


「あぁぁぁぁっ!!!魅梛月ぃぃぃ…神艸に何ていう本を渡してるの!」


「何れは通る道なんだから璃羅兄様…」


「駄目ぇぇぇ〜…ちょ、神艸…そんな本はポイッしなさい!!!ソナタには早すぎる…」

璃羅兄様が一番動揺する姿は中々のモノだった。
今度は下界で微かに流行っているらしいコスプレという類いの物を貴腐神の方々と作ってみようと思う。

漆夜様の理性がドコまで持つか、根性試しといこう!!!
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朱A

父が一人の男性を拾ってきた。
朱い髪をした綺麗な男性は、酷く傷付いていた。私は彼を目にした時…心が辛くなり、涙を流してしまったのだ。


こんなにも人を傷付ける事が出来るだろうか。


鳴呼、何と悲しいのでしょう…


「――…玲樺、啼いているのか?」


「えぇ、そうよ。父が一人の男性を連れて来たの。けれど、意識がなくって…魘されているみたい…」


私の隣に居た彼は、優しく抱き締めてくれる。


「大丈夫だ。かの有名な術師とも云われ、大昔は巫女の血筋だとも謳われた中村家総帥殿だ、救ってくれる…」


「…」


「君は何も心配しなくって良い…」


確かに中村家は大昔、巫女の家系だった。それも神に仕える意味での神聖さを顕す方。
血筋の者は術に長けているのも証だと言う。
父はその中で一番屈している術師…

彼が言う様に、きっと…


――…救ってくれるかも知れない。
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