『幸せはね…色褪せても尚、輝きを持っているんだ…』


頬を緩ませ、語ってくれた男がいた。
感情が欠落していると自覚していた自分からしてみれば、意味が解らなかった。そもそも、幸せとは色んな形があり…手にしてみて味わえるモノだと思っている。
何不自由なく暮らしているのが幸せとか、この人が居て幸せとか。
だから、論理的に大差があるだけの違いなのだろう。
僕からすれば、家族と一緒に居るから幸せという形が出来上がっている。


「気色悪い…」


「どうした?」


『どうした?』じゃないよ。人の顔を眺めながら頬を緩めてるのが鳥肌もん。


「アンタしか居ないよ!何で、僕見て微笑み浮かべてるの?」


「そうか…。癒燐の強気は、母親譲りなんだな。逆に械譲りだったら人を貶す言葉が三倍にして返ってくるしな。そこは、母親譲りで安心…」


「はっ!」


「ソナタが械みたいな性格じゃなくって良かったという事だ。じゃなきゃ…三神帝の御上みたいな黒さを纏いそうな感じがしてならん」


とんだ取り越し苦労だね。
やっぱり、馬鹿なんだろうな…。
容姿は間違いなくモテルだろうし、地位も文句無しだと思うけど。僕に依存しているのは残念としか言い様がない。
何時になったら僕に飽きてくれるんだろうか。
確か、初めて逢った時に言った気がするんだ。『恋愛ごっこに付き合う義理は無い!』って…。

言い寄ってくる女神達が沢山要る中で、僕を選ぶ理由が解らないんだ。
第一、父上も彼が居ても気にしている様子ないし。
寧ろ、僕と彼を見て楽しんでいる感じだ。


「どうでも良いけどさ、いい加減…自分の屋敷に戻れば?両親達、心配しているよ?きっと…」


「…ふっ、心配してくれているんだったら嬉しいな」


切ない表情されたら、言いづらいじゃん。
何時もみたく、俺様的発言はドコにいったのさ。まるで、両親に愛されていない様な雰囲気を纏って…。


「―…癒燐、祖母様が呼んでるよ…」


「えっ」


「夜兎が三神帝まで付いていってくれるから、顔を出しておいで…」


「ほ、ほえっ…父上?」